妻に先立たれた男性の困難 自分の下着のサイズを知らず「野に放されたヒヨコ状態」に
「まさか妻が先に逝くとは」──。パートナーと死別した際、「男性ならでは」の困難が存在するという。生活自立力、そして人間関係のリスクヘッジも大事だ。AERA 2024年12月23日号より。 【データ】年齢によってまったく違う「孤独感」。1位となった年代は? * * * パートナーと死別した人が直面する困難。シニア生活文化研究所代表理事の小谷みどりさん(55)も、そこには「男性ならでは」が存在すると話す。 2011年、夫(当時42)を突然死で亡くした小谷さん。15年にはパートナーを亡くした人たちと「没イチ会」を結成、「先立った配偶者の分も2倍人生を楽しむ」をモットーに活動している。 「生活自立力のない男性が多いんです。子どもの頃は母親、結婚したら妻。誰かが面倒を見てくれないと生活できないので、妻を亡くしたら野に放されたヒヨコ状態になってしまう」 2年前に妻が突然死したという元大企業役員の男性は、トイレの掃除の仕方を知らなかった。自分の下着のサイズを知らず、「パンツはスーパーに売っている」ことを最近知った男性も。 ■共依存はリスキー もちろん、「妻に先立たれた男性」といってもさまざまだ。仕事が現役で妻を亡くした人と、定年退職後に亡くした人とでは違いがあると小谷さんは言う。 「現役で仕事が忙しければ妻がいなくなった悲しさを直視することなく、そのうち妻のいない生活に慣れる人もいなくはない。だけど定年退職後、共に一日の時間を過ごす中で妻を失うのは悲劇としか言いようがない。かつ闘病期間が長かったりすると、『妻のためにやってあげている』という感覚も長くなるので、燃え尽き症候群のような、『何としても生きててほしかった』という気持ちにもなりがちです」 子どもがいるかいないかでも「その後」に違いは出る。ある男性は子どもがおらず、妻を亡くしたとたんに生きがいをなくしてしまったという。自分一人なのに、別にあくせく働く意味はないじゃないか、と。 「その男性は休職の後、早期退職しました。男女共働きが増えたといっても、男性の方が収入は高いというカップルが多いので、男性側に『養うために働く』という意識は強い。養うべき人がいなくなり生きがいを見失う傾向はあると思います」