治らない口内炎はがんのサイン?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください! 【関連画像】図1 頭頸部の構造 ●「のどや口のがん」に関する問題 【問題】咽頭がんや舌がんなど、のどや口の中にできるがん(頭頸部がん)についての説明で、間違っているものは次のうちどれでしょう? (1)男性より女性に多い (2)お酒やタバコが原因になる (3)HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しているとのどのがんになりやすい (4)口内炎がなかなか治らないときはがんの可能性がある
正解(間違っている説明)は、(1)男性より女性に多い です。 ●のどや口のがんは男性に多く、タバコとお酒が強く影響 目の高さから鎖骨の高さまでの範囲を頭頸部といい、そこにできるがんを総称して頭頸部がんと呼びます(図1)。頭頸部がんの約半数を占めるのは、舌がんをはじめとする口腔がんです。一方、のどの奥にできるのが咽頭がんで、上部から順に上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんに分けられます。のどのお腹側(気道側)の声帯周辺にできるがんは喉頭がんと呼ばれます。 頭頸部がんは比較的男性に多く、のど仏の下にある甲状腺にできる甲状腺がんも含めると、男性がかかるがんの中で6番目に多いがんです。 頭頸部がんの危険因子はタバコとお酒です。しかし、中咽頭がんに関しては、最近、3番目の要因としてヒトパピローマウイルス(HPV)が注目されています。HPVは主に性行為により感染するウイルスで、女性の子宮頸がんの原因として知られますが、のどに感染すると中咽頭がんになることがあります。「現在、中咽頭がんのうち、HPVを原因とするものが6~7割程度を占めるのではないかと考えられています」と、東京医科歯科大学病院頭頸部外科教授の朝蔭孝宏氏は話します。 HPV関連の中咽頭がんは若い人に多いのが特徴で、30代前半で発症する人もいます。「このウイルスに感染すると遺伝子がピンポイントで変異し、すぐにがん化しやすいのです。それに対し、お酒やタバコを原因とする中咽頭がんは長い年月をかけて複数の場所で遺伝子変異が起こり、じわじわとがん化するので、50代以上の男性に多く見られます」(朝蔭氏)。 このほか口腔がんの場合は、合わない義歯などによる口の粘膜への刺激が発がんの原因となることもあると言われます。 ●口腔がんや咽頭がんの自覚症状は? 口の中は自分で見ることができるので、口腔がんの場合、異常に気が付きやすいという特徴があります。「よくあるのは、『口内炎が治らない』『痛みが続く』と思って受診し、がんが見つかるケースです。これは放置した口内炎ががん化するのではなく、口内炎とはまったく別物としてがんができるという意味です」と朝蔭氏は話します。「口内炎なら処方された軟膏を塗れば1週間程度で治るので、2~3週間経っても治らなければ専門医に診てもらうことをお勧めします」(朝蔭氏)。 一方、中咽頭がんができる場所として多いのは扁桃腺です。「鏡で口の中を見て、扁桃腺の片側だけが腫れていることに気づいて受診する人が多いですね。飲み込みにくいなど、のどの違和感を訴える人もいます」(朝蔭氏)。 下咽頭がんは食道の入口にできるので、食べ物を飲み込むときに引っかかるような感じがする、痛みがあるなどの症状が出ます。喉頭がんは声帯にできやすく、声のかすれなどが見られます。 「頭頸部がんは生存率が特別低いがんというわけではありませんが、この場所には食べる、飲み込む、話すなど、人が生きていく上で欠かせない機能が集まっています。また、顔や首は常に外にさらされていて、見た目にも関わる場所です。機能面と整容面の両方に関係するのが、頭頸部がんの特徴です」と朝蔭氏は話します。がんの種類によって進行の速さにも差があります。のどや口の中の異変に気がついたら早めに受診しましょう。受診先に迷ったら、日本頭頸部外科学会ウェブサイトの専門医・専門施設リストが参考になります。 ※この記事は、『治らない口内炎や扁桃腺の腫れは「舌がん」「中咽頭がん」かも』『飲み込みにくい、声がかすれる…長引くときは「下咽頭がん」「喉頭がん」に注意』(田中美香=医療ジャーナリスト)を基に作成しました。