パリ五輪柔道“あの”疑惑のルーレットを金メダリスト・永瀬貴規(31歳)は現場でどう感じた?「フランスに流れがあったのは間違いない。でも…」
畳の上で感情は出さず…重んじた「礼」
「本当にたくさんの拍手をいただいて、応援団の方や観客の皆さんの声が聞こえて、すごく気持ち良かったんです。公言していた金メダルを獲れて、やり遂げたという思いと、終わったー、ほっとした、という気持ちが入り混じっていました」 畳の上では礼節を持ち、ガッツポーズをしたり、叫んだりすることはなかった。大歓声に包まれる中、四方に礼をし、畳を降りた。その後、待ち構えていた秋本啓之コーチの前でようやく表情を崩した永瀬は、声を上げ、秋本と抱き合った。 2連覇を成し遂げたそのとき、拳を突き上げ、叫び声を上げたいとは思わなかったのか。そう問うと、永瀬は「そういうタイプではないですから」と照れたように笑った。そしてこう続けた。 「柔道は相手がいて成り立つ競技です。ですから、対戦相手の目の前でガッツポーズはしない、という思いは昔から持っています。2大会連続金メダルという興奮はありましたが、静かに畳を降りることは私にとって当然のことでした」 試合の直後のインタビューでも謙虚さが際立った。メダルを授与され、表彰台で記念撮影をしたときも、銅メダルの選手に前を譲り一歩下がった。永瀬のそうした振る舞いは、礼を重んじる柔道家として絶賛され世界に報じられた。 「インタビューも、表彰式も、普段通りにしていただけです。ですから、SNSなどで騒がれていることには、むしろ驚きました」 その夜には電話やメールで家族や友人、出身校、所属会社に感謝を伝えた。 「私をここまで育てて成長させてくれたのは柔道です。柔道一筋に生きる環境は周囲の方々の支えがあってこそ。特に、安定した生活と柔道ができる環境を与えてくれている旭化成には、感謝しかありません。この金メダルで満足せず、これからも結果を出して恩返しがしたいです、と伝えました」 パリオリンピックでの柔道競技が終わると、クローズアップされたのは審判の誤判定や疑惑のジャッジだった。アリーナにもブーイングが起こることがあった。審判の“質”で勝敗を分け、メダルの色が変わってしまう現実を永瀬自身は、どう受け止めていたのか。 「そうですね……やっぱり審判も人間なので、間違えることもあるのが現実だと思います。オリンピックは普通の国際大会とは違った特別な緊張感があります。慎重になって判定が遅れることも、反則が出しにくいということも、起こりうることです。だからこそ曖昧でない勝ち方をする以外ない。誰が見ても勝った試合であることが大事なんだと、自分にも言い聞かせていました」
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