〝当たったら痛い変化球〟を追い求める巨人・菅野智之を直撃。〝併殺スラット〟を「あえて真ん中低めに投げる理由」とは?【後編】
昨季は自己ワーストの4勝にとどまり、今季、完全復活に燃える菅野智之。今回、SNSを通じて親交のあった野球評論家&ピッチングデザイナーのお股ニキ氏との初対面が実現。前編に続き後編である本記事では、捕手との関係性、卓越した投球術の極意などを本音で語り明かす。 * * * ■捕手のサインを疑って投げると打たれる? お股ニキ(以下、お股) 今年は、正捕手の大城卓三選手とふたりでハワイ自主トレを行なっていましたよね。自主トレは同じポジション同士でやる選手が多く、捕手と一緒に行なうのは珍しいですが、どのような意図があったのでしょうか? 菅野 彼自身、フィジカル的にまだまだなところもありますし、ハワイという環境を気に入ってくれているということも大きかったですね。あとは今年から選手会長になったので、教えないといけないことがたくさんあって。一緒にいる時間が長かったので、配球の話もいろいろできました。 お股 正捕手とエース同士だから、1ヵ月ずっと一緒に練習する中でいろいろな話ができますよね。その結果、阿吽の呼吸というか、以心伝心で配球も伝えられそうですね。 菅野 彼はすごく独特の感性を持っているんですよね。配球に関してはどちらかというとビビリなタイプ。正統派な部分も持っているけど、一方で「そこで(打者の)近めにいくの?」と思う時もあって。つかみどころがないからこそ、いろいろと話をしておきたかったんです。 お股 これは精神論かもしれませんが、捕手のサインに対して、「これはどうなんだろう?」と疑いながら投げるボールと、「これだ!」と納得して投げるボールとでは結果が変わってくるのかなとも思うのですが、いかがですか? 菅野 おっしゃるとおり、絶対に変わりますよ。疑って投げると打たれるイメージがあります。 実は、先発と中継ぎで考え方がまったく違うなと感じたことがあって。山口哲也さんってキャッチャーのサインに対して、絶対に首を振らないんですよ。 僕は新人のころから阿部(慎之助)さんのサインにめちゃくちゃ首を振っていたので、「山口さんはどうして首を振らないんですか?」って聞いたことがあったんですけど、「嫌だったらボールにすればいいから」って言っていて。その考え方は先発にはないので驚きでしたね。 お股 中継ぎはとにかく無失点で抑えることが求められるので、打たれるくらいだったら、あえてボールにするという考え方ですね。 菅野 狙って外すことができるという技術がそもそもすごいんですけどね。そういう考え方をしたことがなかったので新鮮でしたね。 お股 制球に不安がある投手だと、その後のカウントも気になって難しいですが、菅野投手ならば、あえてボールにするのは技術的に当然可能ですよね。 菅野 できます。できるんですけど、その1球がもったいないというか。僕、遊び球とかも投げたくないタイプなので。ツーナッシングで外のボール球を構えられるのも嫌ですから。