なぜ物価の安いエリアに引っ越さないのか―― 東京都港区の貧困層、大都会の片隅で #令和のカネ #令和の親
「慰謝料なし、養育費なし、生活保護なし」で港区に住む
夜の街に放り出される日々が数年間つづき、貯金もみるみるうちに減少したそうです。港区母子さんの現在の経済状況について詳しく伺います。 Q 現在離婚調停中ということですが、元旦那さんから慰謝料や養育費は? 「支払われていません。また、離婚を切り出した際に子どもの教育費として2人で積み立てた貯金約200万円を、無断で持って行かれました。『慰謝料だからな!』と吐き捨て、現在も持ち逃げ中です。離婚協議書には支払う意思が記されていますが、未だ振り込まれていません」 Q 現在の収入源は? 「慰謝料なし、養育費なし、生活保護なしなので、私が会社からもらっている給与で生活しています。加えて港区の児童扶養手当を受け取っています」 Q かつては正規雇用だったとお伺いしましたが、いつから非正規雇用になりましたか? 「子どもを産む以前は、現在勤めている会社の正規雇用でキャリアを積んでいました。そのため私の収入もそれなりにあり、当時は夫婦で1,000万円以上の世帯収入がありました。 子どもが産まれてから元夫は育児に参加せず、ワンオペ育児になったため、勤務時間の融通が利く非正規雇用の契約に変更して、同じ会社に勤めています。 その後離婚してさらに世帯収入がぐっと減りましたが、生活保護の受給要件となる金額設定を超えているため、生活保護は受給できません。 正直、生活保護をもらっている方のSNSを見ていると、自分たちより豊かな生活送っているな……と感じることもあります」
月の収入は最低生活費を超えているが…
貧困に苦しむ港区母子さんは、なぜ生活保護の受給要件を満たせないのでしょうか。生活保護を受給するには世帯収入が、厚生労働省の定める最低生活費以下である必要があります。「最低生活費と収入を比較し、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給される」というシステムです。 港区母子さんは非正規雇用とはいえフルタイムでオフィスに勤務しており、月の収入がこの最低生活費を超えているため、生活保護を受給することができません。 ですが非正規雇用者が、生活保護を申請した時点の収入を毎月維持するのは決して容易では有りません。有給制度がない契約の場合、仕事を休んだ分だけ収入が減ります。 Q 月収入の変動はありますか? 「コロナ禍には子どもが通う保育園が2度の休園、親子でコロナ陽性、子どもの看病の長期化など、仕事を休まざるを得ない期間がつづきました。やむを得ず休職した月はついに収入0円になりました。 当時、病児保育は予約でいっぱいでした。役所の児童相談所に問い合わせましたが『仕事を休んで減った収入分の補助は出ない』という対応でした」 Q 収入0円の月は、生活費をどう捻出しましたか? 「わずかな貯金を使いました。私は離婚後、運よく都営住宅に当選して現在家賃は9,120円です。大変助かっています」