【オートレース】気を引き締め直した黒川京介「もうちょっとうまく合ってくれたらいいところまで行ける」~川口・SGスーパースター王座決定戦
オートレース業界に誕生した最新のSGウイナーがわずか一日で「いつものクロちゃん」に戻っていた。 11月の日本選手権オートレースで自身初となるSG制覇を果たした黒川京介。2017年に33期生としてデビューして以来、ついにつかんだビッグタイトルだった。今年のスーパースター王座決定戦は、過去2度の出場の時とは違う立場で挑むことになった。 そう、今度はSGウイナーとして年末決戦へやって来た。そして、トライアル1、2回戦は2、6着だった。初戦の2着はOKとしても、2回戦の道中立ち回りはちょっといただけなかった。序盤から好ポジションに収まりながら、激しく展開がもつれ、乱れて、気づけば最後は6番手まで順位を落としてゴール線をユルユルと通過した。ベスト8入りを意識するならば、それはあまりにも痛い着順メイクだった。 3回戦トライアルの前、ロッカーで元気よく働き、周囲の選手と会談する黒川がそこにいた。「いやあ、2回戦はやっちゃいましたぁ。なんというか、SGを勝ってちょっと調子に乗っちゃっていましたね。僕はすぐにチョーシに乗っちゃうんで(苦笑)」 決して慢心があったわけじゃない。もちろん油断なんかするわけがない。でも、いつも明るく、イケイケ&ドンドンのキャラを備えるアグレッシブボーイが渇望した勲章を手にして、「よ~し!もう一丁!」と勢いに乗ることは仕方ないことだった。そして、瞬時に気を引き締め直した。「この世界は甘くないです。だから、またチャレンジャーに戻ることにしました!」 いずれは川口の、いやオートレース界を背負い立つ逸材だが、今はまだガムシャラに無心にライバルたちを追いかけ回す挑戦者の立ち位置が心地よい。真の王者になるのは、もう少し後でいい。 「直近までずっと挑戦者だったので、すぐにチャレンジャーの気持ちを思い出しました(笑)」そういう黒川の表情と雰囲気はあまりに吹っ切れて、とても清々しい様子だった。そうそう、これがクロちゃんなんだ。険しい表情でピリピリして周囲を威嚇するのは、やっぱり似合わない。 挑戦者として改めて挑んだ3回戦は4着とやや伸び悩んだが、それでも状態に手応えを十分感じ取っている。「選手権の時の方がいいかもしれませんが、あともうちょっとうまく合ってくれたらいいところまで行けると思っています!」3回戦も試走で3秒26を叩き出したように、エンジンのポテンシャルは確実にある。 3回戦の枠番抽選では好ポジションの2枠を引き当てた。抽選箱から黒玉がポトンと落ちた瞬間、彼の表情はかなり引き締まった。この機を生かさねばと過剰に気が張ったのだろうか。4回戦11Rの抽選ではピンク玉と縁があった。絶対的に不利とされる大外枠である。でも、その時の黒川の表情はひきつっていなかった。むしろ、顔を崩して腹を括っていた。 みなが言う。「クロちゃんが完璧に切れば、どの枠からでもトップに届く」と。8枠上等だ。最強チャレンジャーが重圧も枠も全部まとめて克服してみせる。クロちゃんなら全然できますって。(淡路 哲雄)
報知新聞社