凱旋復帰戦で4-0圧勝…11年ぶりに帰ってきた長友佑都がフル出場でFC東京にもたらしたものは何だったのか?
前への意識づけだけではない。味方がいいプレーをするたびに「ブラボー」という声を響かせた。 チーム最長の走行距離11.336kmをマークしたボランチで、明治大の後輩でもある2年目の安部柊斗には何度も「シュウト、いいね!」と背中を押した。 長友の走行距離も、安部、11.204kmのボランチ青木拓矢に次ぐ11.134kmをマーク。重馬場のピッチでもスプリント回数はチーム最多の「21」に達し、さらにマギーニョに仕事をさせなかった1対1の強さを介して自らの言葉に魂を融合させた。 「一番かけていたのは、みんなのモチベーションを上げる声ですね。(柏との)前節を見ていてちょっと自信がなさそうな、熱量も含めてちょっと足りないなと思ったので」 ヨーロッパの戦いを経て身につけた、状況に応じた細かいポジショニングを指示する声に加えて鼓舞するそれも、試合を通じて「何百回とかけてきた」と振り返った長友へ、長谷川健太監督も「今日は何も言うことはない」と最大級の賛辞を送った。 「熱を持った一人の選手が入るだけで、不思議なものでチーム全体に伝播していく。佑都の存在がトリガーとなって、チーム全体にスイッチが入ってグッと勢いにつながった。自分たちから気持ちを奮い立たせて戦う大切さを、選手たちもあらためてわかってくれたと思う。その意味でも元気印というか、太陽のような選手が加入したのは大きい」 ホームで今シーズン最多、アウェイを含めても最多タイとなる4ゴールを奪っての快勝で、順位を前節の9位からひとつ上げた。22日の次節では来シーズンのACL出場権を獲得する3位につける名古屋グランパスを、再び味の素スタジアムに迎える。 名古屋との勝ち点差は8ポイント。その後も浦和レッズ、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズと、勝ち点差を一気に詰められる上位チーム勢との直接対決が続く。 「最高のパフォーマンスを見せてくれたチームメイトを見ていて、FC東京は絶対に強くなると確信しました。そして僕自身は、魂のこもったプレーを見せていきます」 残り9試合で巻き返し、まだ見ぬJ1リーグ戦制覇へつなげていく。復帰とともに長友が描いた、来秋のW杯へつながる2年越しの視界が良好になりつつあると告げるかのように、試合が終わる直前には大雨がピタリと止んでいた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)