【徹底解説】ビットコインETF 需要の背景、現物の重要性、米国と他国比較、市場はどう受け入れた?、今誰が取引してる?、今後は?
・トラッキングエラーのその後
ETFについて説明する際に、「先物ETFはトラッキングエラーが大きく、現物ETFでは小さくなるため、米国のETF投資家が真の意味で(現物と乖離することのない)暗号資産へのエクスポージャーを獲得した」という内容を記載しました。ETF取引開始から時間が経過し、現物ETFにおける実態がある程度見えるようになってきたため、言及しておきます。 現物ETF取引開始直後は購入者が殺到し、5%前後のプレミアムで推移していましたが、現在(1月26日時点)は市場の裁定機能(プレミアムが高ければより多くのETFが発行され、ディスカウントが大きければ償還される)が徐々に働き、ビットコインの現物価格に沿った値動きをしていることがわかります。このような観点からも、今回のETF上場は成功だったと考えられます。
●今後の展望
・米国におけるETFの進展 今後のETF関連の動きで注意しておきたいのは、やはりビットコインとイーサリアムの進捗、そして、イーサリアムに続いて申請が行われるであろう「次の銘柄」が何になるのかといったヘッドラインです。 ビットコインについては、BlackRockに次ぐ世界第2位の資産運用会社Vanguardをはじめ、UBS、Merrill Lynch等、一部の大手資産運用会社はまだ参入を見送っているのが現状です。承認後のETFの取引状況を観測した結果、これらの企業が参入してくることは十分に考えられるため、動向を気にしておきたいヘッドラインです(第1位のBlackRock、第3位のFidelityの影響力の大きさは上述したとおりです)。 また、ビットコインのオプションETF取引を要請する「フォーム19b-4」をSECが受け付けており、最短で5月末にオプションETFが誕生する可能性があります。ビットコインのオプション市場は徐々に成熟してきており、現在では先物市場と並ぶほどの建玉が存在しているため、本件は今後の注目点となるでしょう。 Bitwise(Bitwise Bitcoin ETFの運営者)がファンドのウォレットアドレスを公開した流れも、ブロックチェーン技術の既存金融との差別化(透明性)という観点で見逃せません。彼らが保有している裏付け資産の数量を、監督機関だけでなく誰もが確認可能であるという事実は、あえて指摘しておくべき大切なポイントです。 イーサリアム現物ETFについては、ビットコインの承認までの流れを考えると、承認可否判断最終期限まで決定が引き延ばされる可能性が高いとの見方が市場では一般的です。最終期限が最も近いETFは、VanEckの「VanEck Ethereum ETF」で、2024年5月23日(日本時間24日)となっています。 SECはイーサリアム現物ETFの可能性を検討する際に、今回承認されたビットコイン現物ETFの効果を十分に観察・検証することが想定され、その観点からも、すぐに(最終期限よりも大幅に手前の日程で)承認が降りることを期待するのは難しいと考えます。 イーサリアム現物ETFの承認に際しては、「イーサリアムは証券か、それともコモディティ(商品)か」という命題も意識されます。暗号資産の証券性を問う基準として、かつてSECとHowey社との訴訟で提示された「Howeyテスト」と呼ばれる基準が一つの参考になると考えられています。承認可否判断の過程で、暗号資産の証券性判断基準の明確化が進むとしたら、それは暗号資産市場の長期的発展にとって歓迎すべきでしょう。このテーマは暗号資産市場のトレンドを大きく左右するため、引き続き注目したい内容です。 次の申請銘柄が何になるのかについては、現段階では判断が難しい状況です。ただし、冒頭で記載したETFの構造(管理者が現物を市場から調達し保管すること)を考えると、時価総額上位かつ市場で売買高があり、米国で排除されていない銘柄から選ばれると考えるのが自然です。
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