【徹底解説】ビットコインETF 需要の背景、現物の重要性、米国と他国比較、市場はどう受け入れた?、今誰が取引してる?、今後は?
・イーサリアム現物ETF承認期待へのレジームチェンジ
ビットコイン現物ETFの承認可否が確定した後は、現在各社が申請中のイーサリアムに市場の関心が移っていく値動きが観察されたことも特筆すべきでしょう。 今回の承認において、ARK 21 SharesのBTC現物ETF承認可否の最終判断期限は1月10日(日本時間11日)でした(同時申請中のビットコイン現物ETFの中で最終期限が最も早いETFであり注目されていました)が、前日の9日(同10日6:11)、SEC(米証券取引委員会)のSNS(X)アカウントが何者かに侵害され、ETF承認との投稿がなされました。 15分後にはゲンスラーSEC委員長が「ETFは承認されていない」旨を発信、SECがSNSアカウントの権限を回復し、誤投稿を削除・正式アナウンス(ETF未承認)を行うと事態は一旦収束しましたが、この誤報をきっかけにイーサリアムがビットコインをアウトパフォームする流れへと市場は変化していきました。
・誰が今のビットコイン(ETF)を売っているのか
価格面ではビットコイン現物ETF上場時を頂点に、安値を切り下げる状況が続いています。過去のETF上場前後で観察されてきた「事実売り」に加え、GBTCからの退避売りが要因とされています。ここでは、GBTCを売却している各参加者について、少しだけ解像度を上げて考えてみたいと思います。 まずはGBTCの動向について、当初619,162枚あったビットコインの残高は、523,516枚(1月25日時点)まで減少を続けています。一日平均で10,000枚以上、当初比で約15.45%減と、看過できない量の流出が発生しています。 取引が行われている現物ETF全社累計では637,266枚から648,754枚へ増加していることがわかります。ただし、1月24日からはGBTCの売りを吸収しきれず、減少に転じている点に注意が必要です。 GBTCを除いた9社の保有枚数推移を作成してみると、順調に増加(18,104枚 → 125,238枚)していることがわかります。こちらの方が、「今回の承認を受けての」資金流入の実態に近いと言えるのではないでしょうか。中でも、世界第1位の資産運用会社BlackRockの「iShares Bitcoin Trust」と、同3位のFidelityによる「Fidelity Wise Origin Bitcoin Fund」の伸長が目立ちます。 GBTCの影響は可視化されましたが、売却に参加する主体としては、以下のような参加者が考えられます。 ・DCG(Digital Currency Group) Grayscaleの親会社であるDCGは、GBTCのディスカウントを軽減するために買い支えを行っていたと報道されています。総額でどの程度の株式を保有しているのかは明確ではありませんが、最大級のプレイヤーであると考えられます。 ・破綻後に資産を清算する必要がある主体 具体的にはFTX、BlockFi、3AC等が挙げられます。FTXに関しては、1月23日の報道で保有していた全株式(2,230万株)の売却完了が明らかになっており、これは概算で19,930BTCに相当します。日平均10,000BTC超の純流出規模に対して、この数量は大きいと言え、一方で、現環境でもGBTCを新規に購入する参加者が一定数存在することも同時に伺うことができます(そうでなければ純流出規模はより大きくなると考えられます)。 3ACについては2020年末時点で3,900万株、BlockFiについては2021年の報道ベースで2,000株相当以上のGBTCを保有していたと推定されます。ただし、このうちのどの程度の数量が既に清算済であるかは不明であり、全量を売却見込み値として見積もるのは過大になるかもしれません。 ・機関投資家や個人投資家 ARKに代表されるような機関投資家、GBTCをディスカウント環境下で長期保有していた個人は、ビットコイン価格の上昇を受けての利益確定売り、GBTCの手数料が他のETFに対して高すぎること(年率1.5%の管理手数料が乗せられており、他社の6倍程度の水準です)を理由に、他社ETFへの乗り換えを進めています。 ・裁定取引者 冒頭で記載したように、GBTCは長らくディスカウント価格で取引されていたため、GBTCを購入し、ビットコインの先物を売ることで、ETF現物転換後に(償還できるようになるため)ディスカウントが消失することを見込んだ裁定参加者が一定数存在していたと考えられます。現物の売却と同時に先物が買い戻されるため、先物市場と総合すると純粋な売却よりも影響は軽減されますが、現物に対しては売却圧力として強く働いていたはずです。ディスカウントが消失した現状において、Grayscaleに対して管理手数料を払いながらポジションを維持するインセンティブは存在しないため、彼らのポジションの多くは既に解消済であると考えてよいのではないでしょうか。 Grayscaleのビットコイン保有残高が減っていくにつれて影響力は弱まっていき、資金流入出のフローは徐々に正常化していくことが見込まれます。現物ETF全体でのフローに加え、GBTCの推移は今後もウォッチしていく必要がありそうです。
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