【徹底解説】ビットコインETF 需要の背景、現物の重要性、米国と他国比較、市場はどう受け入れた?、今誰が取引してる?、今後は?
・米国企業や銀行における受容の可能性
2023年12月に発行された米国財務会計基準委員会の暗号通貨会計規則(ASU 2023-08)が、2024年12月15日以降に始まる会計年度から有効となる見込みです。 本会計規則以前は、米国において暗号資産は無期限の無形資産として(減損を差し引いた取得原価で)会計処理されていました。本規則が発効すると、企業や銀行は、暗号資産を貸借対照表に「時価で」計上し、資産価値をより適切に反映できるようになります。 時価計上できるようになることで、企業や銀行にとって暗号資産を保有することへのハードルは下がり、中でも銀行による暗号資産の保有量が増えることで、暗号資産の既存金融における有用性(暗号資産を担保にした借入等)を飛躍的に高めることが期待されています。 一方で、2025年以降に徐々に実運用化されていくと見られる「バーゼルⅢ(銀行に対する国際統一的規制)」では、暗号資産に対して最大1,250%のリスク・ウェイトが課されるほか、昨年12月には、ステーブルコインが規制上の優遇措置を受けるための基準を厳格化する追加提案もなされています。 自己資本比率を気にしなければならない銀行にとっては、劣後債や資本性証券の150%、投機的非上場株式の400%等と比較した際に、暗号資産は特別な理由がなければ保有を敬遠してしまう可能性があるアセットとなる、という構造については意識しておいた方がよいでしょう(もちろん自己資本比率に余裕のある銀行にとって暗号資産のパフォーマンスが魅力的に映る可能性は存在します)。
●おわりに
今回のレポートは以上となります。SBI VCトレードでは、各ディーラーが暗号資産のニューストピックをとりまとめた週間レポートを発行しています(あたらしい経済のサイトで読むことができます)。直近の暗号資産市場を振り返るのに最適ですので、ぜひご覧になってみてください。非常に長いレポートとなってしまいましたが、ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。 ・備考:Hashdexの現物ETF(DEFI)について 各種報道やデータサイトを見ていて「承認されたのは11件なのに資金流入出や出来高のデータが10社しか載っていないのはなぜ?」と疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。 実は、承認自体のインパクトが大きかったためか、あまり話題になっていませんが、本稿執筆時点(2024年1月25日)で、実際に取引が行われているのは、承認された11件のETFのうちHashdexによるETFを除く10件のみとなっています。 これは、証券取引所側の申請はSECに許可されているものの、先物ETFを現物ETFに転換するためのHashdex側の登録届出書が未発効であるという事情によるものです。 先物・現物を合わせたVettaFiのビットコインETFデータ(2024年1月25日時点)を参照すると、ビットコインETF全体でHashdexの先物ETF(DEFI)が占める運用資産残高の割合は約0.05%と非常に小さくなっています。今後取引が開始される可能性が高いこと自体はポジティブなニュースであり、歓迎すべき内容ですが、ETFファンダメンタルズを考える上で短期的には注意を払いすぎる必要はないと考えます。 ●このコラム/レポートについて 国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」を運営する、SBI VCトレード株式会社。この記事は、同社の市場オペレーション部 清水健登氏による寄稿コラム/レポート記事です。 <本記事について> 本記事は一般的な情報の提供のみを目的としたものであり、いかなる暗号資産、有価証券等の取得を勧誘するものではありません。また、株式会社幻冬舎及びSBI VCトレード株式会社による投資助言を目的としたものではありません。また株式会社幻冬舎及びSBI VCトレード株式会社が暗号資産の価値を保証するものでもありません。暗号資産投資やステーキングにはリスクが伴います。投資やステーキングを行う際はリスクを了承の上、利用者ご自身の判断で行ってください。 <暗号資産を利用する際の注意点> 暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。/暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。/暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。/SBI VCトレード株式会社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。/SBI VCトレード株式会社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。/秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。/暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。
清水健登(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部)
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