年収1000万円以上になると”損”をする!? 受けられなくなる「控除」や増える「保険料」を解説
「年収1000万円」と聞くと、高収入世帯というイメージがあるかもしれません。「1000万円以上あれば生活にゆとりができ、貯蓄も十分できる」と考える人もいるでしょう。 しかし、年収1000万円以上になると、「損することがある」という声もあるようです。その理由として、高収入だと受けられない控除があったり、支出が増えたりするなどの点が挙げられます。 本記事では、年収1000万円以上の世帯の割合や「損する」といわれる理由を詳しく解説します。 ▼会社員で「年収1000万円」以上の割合は? 大企業ほど高年収を目指せる?
年収1000万円以上の世帯の割合
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、年収1000万円超の人の割合は表1の通りです。 表1
※国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」を基に筆者作成 1000万円超の年収を受けている人は、合計で全体の5.4%しかいませんでした。給与所得者のなかでも、1000万円超の収入を得ている人はごく少数であることが分かります。 また、収入に対する「手取り額」は個々の状況により異なりますが、おおよそ年収の7~8割前後といわれています。例として年収1000万円を得ている人の手取り額は、おおよそ700~800万円前後です。
年収1000万円以上になると「損」といわれる理由
一般的に高収入といわれる世帯でも、家計が楽ではない理由はさまざまです。要因として考えられる点は、所得が増えると受けられなくなる控除があること、また所得増に伴って支出も増えやすいことなどが挙げられます。 具体的な例を見てみましょう。 ■年収1000万円以上だと受けられなくなる控除があるため 「高収入世帯」だと、一部の控除制度の対象外となる可能性があります。例えば国税庁によると、「配偶者控除」は納税者本人の合計所得金額が1000万円を超える場合には受けられません。 また、給与などの収入から差し引ける「給与所得控除額」は、収入が850万円を超えると、一律で195万円に制限されます。収入額が増えても控除額が増えていかなければ、相対的に課税対象額が割り増しになってしまうでしょう。 さらに、総所得金額などから差し引きできる「基礎控除」は、2400万円以下までは一律48万円ですが、2400万円超2450万円以下は32万円、2450万円超2500万円以下は16万円、2500万円超では0円になります。 ■所得が増えることで保険料などの負担が増える可能性があるため 所得が増えることで、出費も増える可能性があります。例えば、厚生年金の毎月の保険料額は、標準報酬月額に保険料率をかけて計算されますが、所得が多いと負担額が大きくなります。 また、「高額療養費制度」については、被保険者の年齢や所得で自己負担限度額が変わります。通常、所得が多いと自己負担上限額が高くなります。 さらに、所得税も、所得が増えるほど税率が上がるため、1000万円以上の収入がある世帯は、納める税額も多くなるでしょう。