山本由伸が18歳で見せた片鱗 176勝左腕が“震えた”行動「自分がうまくなることだけ」
現在は野球評論家の他、「星野伸之野球アカデミー」で小学生を指導
現在の星野氏は野球評論家として活動中。加えて大阪での「星野伸之野球アカデミー」で小学生(4年生から6年生)指導にも力を注いでいる。「毎週水曜日。週に1回。僕は北海道出身で子どもの頃はどこでも野球をする場所があったけど、今はどこででもできない。僕はてっきり学校の授業終わりに毎日、グラウンドで練習しているものだとずっと思っていたんです。でも、やれるのが土日だけというので、それ以外でもできるところを作ってあげよう、から始まりました」。 2021年からスタートして今年で4年目。「基本的には“楽しくやる”ということです。当然、そこにはうまくなる、があるんですけどね」。現役時代の星野氏が70~90キロ台のスローカーブを武器にしていたことは子どもたちも知っている。「“カーブの握りを教えてほしい”って言ってきますよ。教えてあげるけど、その代わり難しいよって言ってね。基本的には投げたらいけないので僕は推奨しません。ただ勝手に投げてくるので、それはしょうがないかなと……」。 そんな子どもたちの成長が星野氏の喜びでもある。「この子たちが高校生になって甲子園に出てくれたらうれしいですね」。1期生がまだ中学生。これから先はその夢も膨らんでくる。ただし、星野氏のような遅いボールの使い手については「それは出てこないんじゃないかな。今は僕らの時よりもウエートトレとかがすごくよくなっているので、たぶん球は速くなるでしょうからね。僕だってそういうトレーニングをしていたら速くなっていたかも」と笑いながら話した。 一方で「出てきたら大応援しますよ」ともきっぱり。「最近はボヨーんとしたカーブを投げる選手がいるんで、それはそれでちょっとうれしいなと思っています。僕は人より手首が柔らかいので、僕の投げ方を目指したら駄目だと思いますけどね。今は150キロを投げる人も緩いカーブを投げたりしますよね。(オリックスの)宮城(大弥投手)も投げたりするんで、それもうれしいかな」とも話したが……。 現在58歳の星野氏は自身の野球人生を振り返りながら「僕の時代だって150キロを投げる人はいたわけで、その中で120キロ台の僕がやってこれたのは、客観的に見てちょっと特殊だったのかなと思う。そういう意味では中途半端に速くなくてよかったのかなってね」と口にした。まさに特殊だったからこそ価値もある。そんな巧みな投球術や、遅球を駆使したスペシャルな技を次の世代に伝授できるのも、実践してきた星野氏しかいないだろう。まだまだ今後が楽しみだ。
山口真司 / Shinji Yamaguchi