2025年のAIインパクトを予測--外資系ITベンダー大手5社の見方から探る
Veeam、Cloudflare、TrendMicroの予測とは 次は、Veeam Softwareから。同社でアジアパシフィック日本(APJ)地域担当CTOを務めるAnthony Spiteri(アンソニー・スピテリ)氏が、AIに特化したリーダー職について語った予測から抜粋したのが次の見方だ。 「2025年に向けてデータのプロファイリングが継続的に行われることで、AIに特化した新たな職務としてCAIOが導入されるだろう。CAIOは、組織全体におけるAIの倫理的かつ責任ある、効果的な利用を指揮し、技術チームと主要なステークホルダーとの橋渡しをする役割を担う。この人材は、事業規模と企業価値の向上を推進するために、AIを戦略的に活用する役割を担う。これにより、企業経営におけるデータレジリエンスの重要性がますます拡大するだろう」 「CAIOは最高データ責任者(CDO)やデータ保護責任者(DPO)と共に働くことになるが、その役割には、データの整合性、回復可能性、AIイニシアティブとの整合性を確保する責任が含まれるようになる。企業は重要なデータ資産を保護しながら、AIを通じてイノベーションを推進することができるようになる」 上記のVeeamの予測で筆者が特に注目したのは、「AIに特化した新たな職務としてCAIOが導入される」と明言している点だ。先に紹介したDellでは既に同役職を設けている。ただ、重要なのは企業としてのAI戦略をどう描くかだ。CxOは日本企業でも定着しているが、体制が整っておらず役割が不明確なケースも多々見受けられる。 次は、Cloudflareから。「AI革命はエッジコンピューティングが鍵を握る」として、次のような見方を示している。 「AIの真の可能性を引き出すためには、エッジコンピューティングが必要不可欠であり、実際に必要とされる場所のすぐ近くにコンピューティングパワーを引き寄せる必要がある。エッジコンピューティングは遅延を劇的に削減し、新時代の洗練された応答性の高いアプリケーション処理を可能にする技術だ。コンピューティングリソースが使用ポイントの至近距離に配置されることで、コンマ何秒単位の判断を下す自律走行車、遅延を全く感じさせないインタラクティブなゲーム、瞬時に反応するリアルタイムのビデオ処理といったイノベーションが可能になる。だからこそ、AIの未来を支えるのは、単なる計算能力ではなく、最新の知能や技術を最も影響力のある場所に近づけられるスマートな分散型のエッジコンピューティングなのだ」 上記のCloudflareの予測で筆者が特に注目したのは、まさしく「エッジコンピューティング」に着目している点だ。これによって、AIとリアルタイム処理を連携させることができる。これがどれだけの可能性を持つか。同社はその一端を語っていた。 最後に、TrendMicroから。「法人組織のAI活用に伴う自律型AIによるリスクや情報漏えいが課題」として、次のような見方を示している。 「法人組織におけるAIの活用が進むことで、業務効率の向上やデータ分析の精度向上といった多くの利点が得られる一方で、さまざまなセキュリティリスクが懸念される。AIがより自律的に行動し、企業のシステムやツールを自由に操作するようになると、人間の目が届かない場所でさまざまな処理が行われるようになる。こうした状況では、AIの行動をリアルタイムで把握し制御することが難しくなり、重大なセキュリティリスクとなる可能性がある」 「特に懸念されるのは、大規模言語モデル(LLM)を介した機密情報の流出だ。従業員が意図せず、個人情報や知的財産に関する情報をAIサービスに入力する指示や、プロンプトに含めてしまうことで、これらの情報が外部に漏れてしまう恐れがある」 「また、法人組織の中には、インフラの脆弱(ぜいじゃく)性を発見するためにAIを活用するケースがあり、万一その脆弱性情報が流出してしまった場合は、サイバー攻撃に悪用される可能性がある。さらに、法人組織が導入しているAIサービスの脆弱性が新たな攻撃対象となり、外部からの乗っ取りを含む不正利用の脅威につながる恐れがある」 上記のTrendMicroの予測で筆者が特に注目したのは、AIの活用が広がればセキュリティリスクも高まることを指摘している点だ。このことは今後、企業および社会としてしっかりと認識し、対策を講じていかなければならない。 2025年は、人間とAIがどう付き合っていくかを本格的に試行錯誤する年になるだろう。これはコンピューターが生まれた時から予見されていたことだ。もう後戻りはできない。ならば、うまく付き合っていきたいものである。