ラーメン官僚も絶賛! 北千住『らぁ麺屋のさかいさん』の絶品ラーメン「牛中華」とは? #食楽web #ラーメン
「塩らぁ麺」は、重層的な牛成分のうま味とそれを真正面から受け止める塩ダレとが相互補完的に作用し、さらなる高みへと到達。“牛肉と塩とを上手く掛け合わせれば垂涎の味わいが現出される”。そのセオリーが揺るぎのない真実であることを、ラーメンスープという枠組みの中で、見事に証明してみせています。
「味噌らぁ麺」は、スープの一滴一滴を構成する有機米麹や国産大豆の形状までもが脳裏に浮かぶほど圧倒的な素材感が魅力。そんな土の恵みの息吹の向こう側で、心臓の鼓動のように規則正しく脈打つ牛の存在感も、スープの水準の底上げに大きく貢献。店主の言葉どおり、「素朴で優しいテイストでありながら、物足りなさは一切感じさせない」会心の出来映えに仕上がっています。 「牛中華」「塩」「味噌」ともに、一度手を付けたら最後、“飲み干す”以外の選択が許されないほど秀逸。“剛の牛中華”・“総合力の塩”・“柔の味噌”といった具合に、それぞれがまったく異なる趣を有しながら、等しく凄まじく美味です。
スープに合わせる麺も三者三様です。 「『牛中華』は、オープン直後に麺の仕様を2回変えました。タレをブラッシュアップし、作り慣れてくると、もう少し柔らかな麺の方がスープとの相性が良くなるのではないかと考え、今は『春よ恋』を使った細めの麺を使っています。『塩らぁ麺』の麺は、『マタドール本店』で使っている全粒粉入りの細麺、『味噌らぁ麺』の麺は、『みそ味専門マタドール』で用いていた中太平打ち麺をチョイスしました。スープをしっかりと受け止め、麺自体の風味も良好です」 いずれの麺も、精魂を込めて創り上げたスープの魅力を、寸分も損なうことなくダイレクトに食べ手へと伝え切る“このスープにしてこの麺あり”の傑作。どれだけすすっても飽きることがありません。
『さかいさん』のトッピングで特筆すべきなのは、他店では滅多に食べられない、牛チャーシューです。舌上でとろけるようなソフトな触感と牛らしい重厚なコクと甘美な香りを兼ね備えた、同店の牛チャーシュー。その作り方を酒井店主にお聞きしたところ、以下のような答えが返ってきました。 「牛肉は、他の動物の肉と較べて保水力が低く、単純に煮込むとパサついてしまいます。かといって、煮込みを避けて低温調理で保水力を得ようとすると、筋が固くなり、とろけるような食感が得られません」。 「そこで、筋を柔化させる酵素を混ぜたソミュール液に一晩漬け込み、液から取り出した後、肉の表面を焼き、タレと共に真空処理を施して一晩寝かせ、真空調理の技法で8時間かけてゆっくりと熱を加えることにしました」 筋を柔らかくする酵素と最適温度を探り当てるのに苦労したと、店主が述懐するとおり、気が遠くなるような手間暇をかけて開発した絶品中の絶品です。 名店『マタドール』から薫陶を受けながらも、自分らしさを追求する姿勢に、大いに好感が持てました。これからも、末永く応援していきたいと思います。
●SHOP INFO 店名:らぁ麺屋のさかいさん 住:東京都足立区千住旭町43-13 TEL:090-3207-6561 営:11:30~14:30、18:00~21:00、日、祝11:30~16:00 休:水曜
(撮影・文◎田中一明)