日本橋の街なかがミュージアムに!マップ片手に多様な建築群楽しむ
中世風装飾の珍しいビルも
様式や装飾などが個性的な建築物の集まる東京・日本橋エリアに着目し、街全体をあたかも展示会場のように捉えた「さらに装飾をひもとく―日本橋の建築・再発見」展が、高島屋史料館TOKYO4階展示室で開かれています。会場で無料配布されているマップを手にして外に足を運び、多種多様な建築群を巡る街歩きが楽しめます。
本展は、建築史家で東北大学教授の五十嵐太郎さんの監修で2020年9月から21年2月まで開催された「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見」展の続編として企画されたもの。 オリンピックと同じく、ギリシャを起源として世界に広がった古典主義の建築デザインに注目し、日本銀行本店本館や三井本館など荘重な雰囲気の建築物を主に紹介した前回を一部継承しつつ、様式や形態の異なる建築群が幅広く紹介されています。 本展でも監修を務めた五十嵐さんの一押しの建築は、「丸石ビルディング」(千代田区鍛冶町1の10の4)です。重厚感と安定感を漂わせる古典主義的建築物が多い日本橋エリアでは珍しく、中世風の装飾を持つ、知る人ぞ知るビルです。 玄関の両側にはライオン、ねじれ柱の上にリス、その横にはフクロウの像が確認できます。さらに、アーチにはワシ、ヤギ、ブドウなどが、柱頭にはひげを生やした老人の頭部の像があります。自由かつ多幸感あふれる装飾は、ロマネスク建築の彫刻を想起させます。 設計者の山下寿郎(1888~1983)は、日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」の設計者としても知られる人物です。
「正倉院」模した和の意匠も
展示会場には、床に日本橋近辺の地図が描かれており、実際のビルが立地する位置に、そのビルに関する解説などが記された塔状の展示台が立てられています。 解説を読みながら会場内を移動すると、そのまま日本橋近辺を散策している気分が味わえるという趣向が凝らされているのです。 耐熱ガラスメーカー「HARIO株式会社」の本社が入る「ハリオグラスビル」(旧川崎貯蓄銀行富沢町支店、中央区日本橋富沢町9の3)は、古代ギリシャ建築の様式の多くが同居している点がユニークです。 溝彫りした「コリント式」の柱が全体的に確認できますが、北西角の玄関部分には「イオニア式」と「ドリス式」の両様式を取り入れた柱頭デザインが施されています。 旧銀行建築としては比較的小規模ながら、均整と調和のとれた貴重な建築として、国登録有形文化財(建造物)に指定されています。