兄を失い3年…「誰かの心の支えになりたい」妹が踏み出した新たな一歩 26人犠牲・北新地放火殺人事件
時には北新地放火殺人事件の容疑者について話すこともあります。 48歳の男性 「薬物依存になってアルコール依存になって体にタトゥーを入れて親や病院や社会に対する反発心。こんな世界は間違っているというのを、多分の事件の加害者は外に向かって怒りが出たと思うんですよ。僕は自分を傷つけることで自分の怒りを周りに知らせたいと思ったんですよね。僕も25歳から精神科にかかっているので、お兄様が心療内科医だったということで。事件に対しては本当に悲しいですし、自分に置き換えて、自分がもし外に向けて攻撃する人間だったらと想像すると本当に怖いですし、誰か話を聴いてあげられる方が容疑者の側にはいなかったんだろうなって。僕の今までの人生と同じようにそれを強く感じます。だから加害者支援をされていると聞いた時にすごく感動しました」 伸子さん 「最初は犯罪を再犯しないようにと動いていましたけれど、そこというよりもむしろ、一人ずつが生きやすいというか、生きる目標を持つとか。生きることを、なんていうのかな……悪いことに集中するんじゃなくて、『今良い状態を作るために、どうしていくか』っていうことに意識を向ける人が増えていくだけでいいんじゃないかなと思っているんですよ。その人が一人でも幸せだったら、その幸せって絶対波及するし、つながらないかなって思っているんですよね」
■最愛の兄のもとへ
事件から3年となった12月17日。最愛の兄を失った場所で、犠牲となった26人に向け祈りを捧げた伸子さん。その足で向かったのは、兄のお墓です。12月17日に訪れるのは、今年が初めてのことです。 伸子さん 「3年はあっという間のような長かったような。私もそうですけどほかのご遺族の方や元患者さんも、きょうという日を思い出されて苦しくなったり、しんどくなったり、悲しくなったりという思いをされているだろうなと思うと、そういった人をこれ以上増やしてはいけないと思っているので。事件があったことはもう変えれないですけど、同じようなことが起きないように、自分がやれるだけのことをやっていくと伝えました。兄の存在も感じながら活動していますので、挨拶というか『来たよ』という感じ。来なくても怒んないでしょうけど」 事件から3年。大切な人を失った悲しみは癒えることはありませんが、伸子さんは今できることを続けていくと決めています。 今目の前にいる「あなた」のよりどころになる。伸子さんが開くもう一つの心の”クリニック”です。