パリ五輪で2連覇「何もかもがうまくいった」 柔道の阿部一二三語る「きょうだい物語はシーズン3」
「4連覇を目標にしている中、今回2連覇できなければ僕の柔道人生で3連覇は多分無理になっていた。またゼロからのスタートなので。そう考えるとしんどかった。次は追われているけれども、ある意味で挑戦者のような気持ちで挑めるのかな」 ―勝ち続けていても不安は消えなかったか。 「打率や本塁打などがある野球やタイムで競うスポーツのように成長が目に見えて分かる競技ではない。勝ち続けていれば調子がいいと言えると思うが、強くなっているかといえば難しい。そういう苦しみは一生向き合うものなのかな」 ―克服の仕方は。 「不安だからこそ練習を重ねた。そういう3年間だった。例えば試合時間が10分に及び、きつくなって悪い部分が出る場面など自分が負ける展開も常に考えていた。いい想像だけでは勝てない」 ―混合団体の決勝では敗れて涙を流した。 「1階級上の相手だったが、僕が勝っていれば日本の優勝だった。久しぶりにあんなに悔しい思いをした。そういう気持ちになれるのは五輪という一番大きな舞台だけ。今後に生きる経験で、さらに強くなれる」 ―喜ぶフランスの選手を見て感じたことは。
「東京五輪から2大会連続決勝で負けている。次はチームジャパンで金メダルを取りたい。そこは負けられない」 ―兄妹そろっての2連覇はかなわなかった。 「2人ともロスに向けてやっていこうという気持ちになっている。今はそこだけを理解できていればいいのかな。きょうだいの物語はシーズン3。ロスで『やっぱり阿部きょうだいは強いな』と思われる姿を世界中に見せつける。きょうだいとしてのリベンジをしたい」 ―ロス五輪に向けてはさらに研究される。次の進化のイメージは。 「めちゃくちゃはっきりしているけれど、今は秘密。足技が五輪で決まるまでに3年かかった。まだ取り組む前なので、できるようになったら皆さんに見せたい。目に見える成長を示せるくらい新しいことにチャレンジする」 ―再始動の時期は。 「まだ分からない。五輪が終わって1、2週間後くらいから軽く体を動かしてはいるが、楽しく運動しているという感じ。本気でロスに向けてやっていくのは年明け頃からかな。試合の予定も焦らずに決めていきたい」 ―今やスポーツ界の「顔」になった。
「柔道だけではなく、人間的にも尊敬されるようになりたい。まだ実感は湧いていないし、そうなれるのかは分からないが、日本のアスリートを代表し、引っ張っていけたらいい」 × × あべ・ひふみ 柔道男子66キロ級で21年東京五輪、24年パリ五輪金メダル。世界選手権は17、18、22、23年制覇、19年3位。全日本選抜体重別選手権は16、17、22年優勝。女子52キロ級で東京五輪覇者の阿部詩(パーク24)は妹。得意は背負い投げ。兵庫・神港学園高―日体大出、パーク24。167センチ。1997年8月9日生まれの27歳。兵庫県出身。