なぜ今年の夏は「地獄の暑さ」だったのか…これからも地獄が続くかもしれないと専門家が心配する理由
猛暑日が毎日のように継続した昨年や今年の夏は記憶にも新しい。特に昭和生まれの読者は、昔の夏と最近の夏との違いを肌で感じていることだろう。先述の15地点での長期間の気温変動を図1で見てみよう。気温の上昇は一定ではなく、1年、もしくは2~10年スケールでの変動を繰り返しながら徐々に上昇していることがわかる。特に10年代から急速にそのペースが早まっていることにも注目したい。 そもそも気候変動は、人為起源と推定される地球温暖化だけでなく、自然の変動として発生する年々変動などのさまざまな時間スケールの変動との重ね合わせとしてとらえることができる。それを踏まえたうえでも、図1に見られる長期の上昇トレンドは、人類の温室効果ガスの放出が原因となる地球温暖化が主な要因であろう。 さらに、首都圏や関西圏の都市部では、地球温暖化の効果に都市化に伴うヒートアイランド現象が重なり、図1のペースよりも気温上昇の幅がさらに大きくなっている。日本人の多くはこのさらに大きくなった気温上昇を体験しているのである。 ■熱中症による死者が1500人を超えた夏 18年、私は気象庁職員として最後の夏を気象研究所長として迎えていた。この年は、7月に西日本豪雨とも呼ばれる記録的な豪雨が西日本を襲い、犠牲者は200人を超えた。 昭和20年代などは大雨や台風で1000人を超える犠牲者が出る年も珍しくなかったが、治水整備や予報技術が進み、大雨災害による犠牲者は著しく減少してきていた。犠牲者が100人を超えた大雨は、1983年が最後だった。ところが2018年になって、平成に入ってから全くなかったような規模の大雨災害が発生したのである。 甚大な被害をもたらした梅雨が明けると一転して猛暑の連続となり、それまでの暑い夏として知られた10年や13年をはるかに超えるペースで猛暑日の数が増えていった。厚生労働省の人口動態統計によると18年の熱中症による死亡者は1581人であり、記録的な大雨災害の犠牲者よりもさらに1桁大きな数字であった。 図2は、近年の中でも猛暑日の多かった年について、全国の観測点での猛暑日の累積積算日数をグラフ化したものである。18年がそれまでの暑い夏に比べても猛暑日がぐんと多くなっているのがよくわかる。ところが、23年には9月の追い上げでこのダントツに暑かった18年の記録を超えた。さらに、今年はその23年の記録を軽々と超えてとんでもない記録となった。