タクシー不足による「交通空白」にどう対応? 衆院選での「ライドシェア」議論は
■ライドシェア拡大 各党の考え方は?
それでは、今回の衆院選で各党は、公約でライドシェアについて、どのような方針を示しているのでしょうか? ●自民党 「公共・日本版ライドシェア等の取り組み強化など、自治体と地域関係者が連携・協働する『リ・デザイン(再構築)』を全国展開する」ことで、「交通空白」の解消を目指すとしています。 ●立憲民主党 政策集の中で、ライドシェアについて、「諸外国(韓国、トルコ、台湾など)でも禁止されており、一旦認めた国でも、諸問題や裁判の判決等により、禁止や再規制を行う傾向にある国が、OECD加盟38か国中で8割に及ぶ」「持続可能な地域公共交通の実現とも矛盾する」としています。公約では、地域の公共交通の持続可能性を高めることを目指すとしています。 ●日本維新の会 経済成長のための規制改革の具体事例として、ライドシェアの推進を挙げ、「ライドシェアや民泊普及の障壁となる規制を撤廃し、シェアリングエコノミーを強力に推進する」としています。 ●公明党 「日本版ライドシェア」や「公共ライドシェア」について、「実施効果を丁寧かつ継続的に検証する」とした上で、配車アプリの普及なども組み合わせて、「交通空白」の解消に向けて取り組むとしています。 ●共産党 「ライドシェア普及の促進では、地域公共交通衰退の根本的な解決につながらないばかりか、乗客の安全が保障されない乗り物が増えかねない」としています。その上で、地域の公共交通の維持のための財政支援や予算を増やすべきだとしています。 ●国民民主党 「ドア・ツー・ドアの乗り合いタクシー(デマンドタクシー)、コミュニティーバスなどを、国の基準の見直しや予算措置で、強力に支援する」としているほか、タクシーのない地域では、住民委託制度を創設するとしています。 ●れいわ新撰組 ライドシェアについての具体的な記述はありませんが、公共交通の拡充を訴えています。「地域の『足』でもある公共交通の継続的な運営を国が支援し、再公営化も検討する」としています。 ●社民党 ライドシェアについての言及はありませんでしたが、地域公共交通を充実させるために、地方交付金を倍増するとしています。また「通院・買い物など、すべての人の『移動の権利』を保障する」としています。 ●参政党 記述なし。
■選挙きっかけに議論活発化できるか? 識者の見方は
こうした各党の公約について、野村総合研究所の木内登英氏は「選挙の焦点が物価高対策や消費税率の引き下げの是非など、目先の問題になっていて、(ライドシェアなど)規制改革が議論のテーマになっていない」と分析しています。 木内氏は、その上で「ライドシェアの議論には、交通弱者の救済と、規制改革によって競争を促し、経済の効率を高めるという2つの側面がある。本来は、お金をばらまくより、経済の効率を高めることを議論する方が重要だ」と指摘しています。 衆院選を経て、ライドシェアをめぐる議論が、どのように動いていくのかにも注目です。 (経済部・上野美菜)