自信がなくても「リーダーシップがある人」に変わるには? 1つの心理学的テクニック
わたしたちは社会において、周りからさまざまな役割を期待されています。「リーダー」というのも、ひとつの役割です。 部下の信頼を勝ち取る「声かけ」の極意 その役割を演じるために「リーダーとしての自分」というセルフ・パペットを設定します。これを心理学では「イメージとしての自己」と呼びます。ある状況、ある人物間において共有される「こうあるべき」とみなされる自分のことです。他者が評価するのは、この「イメージとしての自己」、つまり「セルフ・パペット」です。 ※本記事は矢野香著『世界のトップリーダーが話す1分前までに行っていること』(PHP研究所)の内容を一部抜粋・再編集したものです。
カリスマたちは「リーダーとしての自分」を上手に操っている
歴史に名を残すカリスマと呼ばれるリーダーたちは、「リーダーとしての自分」を演じることで、まわりの人々を動かしてきました。トップリーダーと呼ばれる人こそ「セルフ・パペット」を上手に活用しているのです。 「なりたいリーダーとしての自分」をセルフ・パペットとして設定する。それを俯瞰しながら、操り人形を操るように動かしていく。当然そこには、リーダーとしての役割と、本当の自分との間にギャップが生じてしまいます。これを心理学では「役割距離」と呼びます。 役割距離は、現代においてはリーダーでなくても誰にでも必要な社会的スキルともいえます。SNSでの匿名発信や、本当の自分とは違うキャラのアカウントで発信することもあるからです。現代は、だれもが「セルフ・パペット」を操る必要があるのです。
弱い自分を守ってくれる「身代わり」
「セルフ・パペット」を設定する利点は大きく2つあります。 1つ目は、「自信がなくてもリーダーになれる」ということ。 本当の自分は、リーダーという役割を果たせる自信がないという方も大丈夫。セルフ・パペットに自信があるようにふるまわせることによって、本物の自信は後からついてきます。 クライアントの中にも、地方議員選挙に初出馬する専業主婦や先代の病気により急に家業を継がざるをえなくなった20代の経営者など、「本当の自分」はまだまだ自他ともにリーダーとは認められないという方がいらっしゃいました。 しかし「リーダーとしてのセルフ・パペット」を操るトレーニングを行い人前に立っていただいたところ、「将来、自分たちを守ってくれるリーダーになりそうだ」という周囲の方々からの期待を集め、応援を得ることに成功しました。そして、選挙に当選したり、名実ともに会社のトップの立場を獲得したりすることができたのです。 2つ目は、「自分の心を守る」ということ。 政治家や企業のリーダー、起業家などのトップリーダーは、会社や組織、地域を代表する公人です。公的な立場上どうしてもその一挙手一投足に注目が集まり、賛否両論が分かれてしまいます。どんなにキャリアを積んでも年齢を重ねても、他人からの批判や誹謗中傷に慣れる人はいません。大なり小なり心にダメージを受けストレスを感じます。 しかし「リーダーとしての自分」であるセルフ・パペットと「それを操る自分」を切り離せば、「批判されているのはパペットだ。自分が批判されているわけではない」と捉えることができます。人格否定されたのではないと思えることが、心を守ることにつながります。 「『無能なくせに偉そう』と批判を書き込まれたのは、声が大きすぎて相手の勘にさわったのかもしれない。次はパペットに、もう少し優しい声を出させてみよう」と変更することができます。 現代社会においては、見知らぬ人から非難を浴びることはトップリーダーなど特別な立場にある方だけの問題ではなくなってしまいました。誰もが匿名で言いたいことを言いあえるSNSコミュニティで悪口や誹謗中傷に深く傷つき、本来あってはならない悲しい選択をする方がいることも事実です。 SNS時代の今こそ、自分を守るために「セルフ・パペット」を設定しましょう。「セルフ・パペット」が身代わりとなり、あなたを守ってくれます。