自信がなくても「リーダーシップがある人」に変わるには? 1つの心理学的テクニック
セルフ・パペットをつくる3ステップ
<ステップ1>セルフ・パペットの種類を選ぶ セルフ・パペットを次の3種類の中から選びます。アメリカの心理学者ソロモン・エリオド・アッシュが提唱した印象形成理論をもとにカテゴリーに分けています。あなたが理想とするリーダー像に近い姿を選択してください。 「親しみやすさ」 特徴:話しかけやすい、優しい、親切、明るい、元気、外交的、おもしろい 「活動性」 特徴:堂々とした、意欲的な、積極的な、鋭い、リーダーシップ、強い 「社会的望ましさ」 特徴:信頼できる、きちんとした、分別ある、誠実な、知的な、大人っぽい、安心できる 大事なことは本来の自分ではなく、なりたいリーダーとしての自分の姿を選ぶこと。本来の自分とはかけ離れていても大丈夫です。だからこそ、スピーチトレーニングによってそのギャップを埋められるように練習するのです。
<ステップ2>未来の自分を先取りする 「セルフ・パペット」は、現在の自分ではなく、未来の自分を先取りして設定しましょう。社会人であれば5年先、学生であれば10年先が目安です。将来自分がこうなっていたいというリーダー像をイメージします。そして、すでにリーダーとなった自分として行動します。 リーダーとしての話し方、将来着てみたいブランドの洋服、時計などの装飾品、手帳、ボールペン、バッグなどを買ってみる。住みたい街に行く、常連になりたいお店に行ってみるなどなど。 思いつく限りの想像を膨らませましょう。妄想でかまいません。小さなことから現実の行動にするのです。そのときにかかる費用は、自己投資です。
<ステップ3>新しい「セルフ・パペット」に変更する 「セルフ・パペット」を使って背伸びをする感覚を私は「制服理論」と呼んでいます。 学校の制服をイメージしてください。中学入学時は大き目だった制服は、卒業する頃には小さくなっています。そして高校に進学すれば、また新たな少し大きめの制服を着用します。 人が成長する過程も同じです。「理想像」は少し大きめ、背伸びをしたくらいがちょうどいいのです。成長期には制服を数年単位で新調するように、人としてさらに成長したい場合には「セルフ・パペット」を新調します。 初めに設定したセルフ・パペットをなんの負荷も感じずに楽々と操ることができるようになってきたら、次の段階へと進む合図。新しいセルフ・パペットに変更しましょう。 このときステップ①で選んだものとは別のカテゴリーを選ぶのもよいでしょう。 例えば、ステップ①で人前で話すことが苦手だったので「活動性」キャラクターを設定したとします。その後、堂々とした印象を手に入れた次は「親しみやすさ」キャラクターを設定します。すると、「堂々と」しているのに「話しかけやすい」というリーダーが誕生します。この印象の幅と深さが人間としての器の大きさ、対人魅力につながります。 ステップ①から③までを繰り返せば、最終的には「親しみやすさ」「活動性」「社会的望ましさ」のすべてを手に入れることができます。「セルフ・パペット」は、常にあなたをさらなる上のステージへと引き上げてくれる力強い相棒になるのです。 自分の人生を切り拓くために「セルフ・パペット」を設定し、「伝わる人」になるための話す力を磨いていきましょう。
矢野香(国立大学法人長崎大学准教授)