「用手肛門拡張術」で切れ痔は改善できる それでもダメなときの手術法とは?
切れ痔に対する手術療法
編集部: 薬物療法や生活習慣の改善でも切れ痔が治らない場合には、どうしたら良いのでしょうか? 白畑先生: その場合には手術を検討します。一般的には、下記の条件に当てはまる痔には手術が適応となります。 - 再発を繰り返すもの - 肛門括約筋の緊張が強度で排便時、排便後の疼痛が激しいもの - 慢性化して狭窄を認めるもの - 炎症性肛門ポリープを認めるもの - 潰瘍、痔ろうを形成しているもの 編集部: 切れ痔の手術はどのようにして行うのですか? 白畑先生: さまざまな術式がありますが、たとえば当院では、狭窄を認める慢性裂肛の治療には最も低侵襲である「用手肛門拡張術」をまず初めにお勧めしています。 編集部: それはどのような治療ですか? 白畑先生: これは仙骨硬膜外麻酔によって行われるもので、炭酸ガスレーザーを使用して狭窄の起点となっているポリープや難治性の潰瘍や瘢痕(はんこん/傷の跡)をレーザーで蒸散させ、肛門を拡張する非常に低侵襲な手術です。 肛門超音波検査や肛門内圧測定などにより術前後の客観的評価も可能です。 編集部: それでも治らない場合にはどのような治療を行うのですか? 白畑先生: 「側方内括約筋切開術」や「皮膚弁移動術」を検討します。側方内括約筋切開術は内肛門括約筋を直接メスで切開し、狭窄を改善する方法です。 一方、皮膚弁移動術は、瘢痕化した裂肛部分を切開あるいは切除して狭窄を解除したあと、肛門の外側の皮膚を移動させ、肛門の縁に覆い被せて縫い合わせる手術のことをいいます。 編集部: これらはどのような基準で選択するのですか? 白畑先生: 切れ痔の多くは用手肛門拡張術で改善できます。しかし、慢性化して深い傷になっている切れ痔に対しては、レーザーによる肛門拡張術や皮膚弁移動術が行われることがあります。また、筋肉が硬くなっている場合には側方内括約筋切開術が行われます。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 白畑先生: 切れ痔は有病率が多い病気であり、誰にも相談できず、ひとりで悩んでいる方は少なくありません。一時的な症状であれば、ドラッグストアなどで市販されている薬を使い、様子を見るのも良いと思います。 しかし、痛みが繰り返す場合や、痛みが強い場合にはできるだけ早めに医師の診察を受けることが大切。万一、手術が必要になった場合でも日帰りで治療を受けることができるので、多忙な方でも安心です。切れ痔で困ったことがあれば、受診することをお勧めします。