ロックスター、志磨遼平の孤高に至る物語。自叙伝『ぼくだけはブルー』で何を描いたのか
幼少期を描くことと、『ぼくだけはブルー』の意味
―先ほども触れましたが、『ぼくだけはブルー』では幼少期の記述もあって、とても面白く読ませていただきました。 志磨:そのあたりは難しかったですね。「ミュージシャンの自伝、幼少期のところ飛ばして読みがち」ってありませんか。音楽にまつわるエピソードが出てくるところまで飛ばして読んじゃう。 「俺が生まれた街は……」とか「俺のおふくろは……」みたいなパートは、よっぽどじゃないと興味が持てない。だから、幼少期の記述をどれぐらい膨らませるかは悩みながら書きました。 ―『ぼくだけはブルー』の最終章あたり、ドレスコーズの初期メンバーが全員脱退するところの記述で、幼少期の自分と変わっていなかった、地続きであったというような文章もありました。そういうふうにつながっていくのかと、厚みを感じました。 志磨:そう。それが本当に、(メンバー全員脱退の)当時の実感で。バンドを始めるまでは誰にも心を開かない内気な子どもだった自分が、あれよあれよと別人のようになって、性格もずいぶん陽気で社交的になったもんだと思っていたのですが。ところがどっこい、幼少期の頃から何ひとつ変わってないじゃないかってことを初期メンバーといると痛感しまして。なので、小さい頃の話をしておかないと、のちのちその話につながらないんです。 どうしても逃れられない運命というんでしょうか。かと言って、それが不幸というわけではないし、トラウマというほどでもないんですけど……。どうも僕の性格、性質みたいなものが、幼少期の時点で決まったんだなというのが。 ―『ぼくだけはブルー』というタイトルは、小学生時代、志磨さんだけが青いランドセルを選んだことと、高校入学時に1人だけ髪の毛が青かったことからきていますよね。 志磨:それもそうですし、憂鬱の「ブルー」ともかかっています。なぜか、僕だけ――僕は人見知りの気もあるので――みんながワーッと盛り上がっていると、なぜか塞ぎ込んで1人で落ち込んでしまうっていう。最初は別のタイトルも考えていたんですけど、書いてるうちにふと『ぼくだけはブルー』っていうのは、いいかもしれないと思ったんです。
インタビュー・テキスト by 今川彩香 / 撮影 by 山口こすも