カカオ相場の高騰受け、代替品開発が活発化
カカオ豆の生産を取り巻く環境が厳しさを増している。これまでも、生産国のカカオ栽培農家の低収入問題や児童労働問題などの課題が指摘されてきたが、24年に入りカカオ豆の相場が高騰した。背景には生産国の異常気象や財務状況悪化などがあり、カカオ豆生産の持続可能性に黄信号が点滅したため。こうした中、カカオ豆の代替を探る動きが活発化している。2020年初頭から欧米のスタートアップを中心にカカオを使わない代替チョコレートの開発が進んでいたが、ここにきて、韓国の代替食品素材専門のスタートアップ企業であるHNノパテック社が、独自の代替カカオ原料「エカオ」で代替チョコレート市場に名乗りを挙げた。
韓国フードテックが名乗り
同社のキム・ヤンヒ最高経営責任者(CEO)は「カカオ栽培がもはや持続可能ではないという懸念が高まり、代替カカオ原料に対する世界的な需要が高まっている」と語る。HNノパテック社はキムCEOが起業。キムCEOは54歳の女性で、28年間食品研究開発を行い、韓国農林畜産省食品部の代替肉研究企画委員を務めた。気候変動による食糧危機の問題が深刻になることを予測し、環境に優しい代替食品開発を通じて、グローバルフードテックを先導する企業を目指し同社を設立。 同社が開発した代替カカオ原料「エカオ」は、エゴマの実から油を搾ったときに残った油かすなどの副産物から生成。「イングレミメティクス」と命名した新技術は、さまざまな成分から目的の成分だけを抽出組み合わせることで、目的の混合調整物を実現する独自技術。「実現可能性の低い分子分析法や、安全性に関する論争のある化学的合成法とは異なる革新的な技術」(キムCEO)であり、生産コストも従来のカカオよりも約30%削減できる。米国の大手食品会社も注目しており、現在、購買確約書が届いているという。 「エカオ」は、「エコ+カカオ」の略で環境にやさしい代替カカオ原料という意味。試作品は、食品表示制度にのっとり、カカオやチョコレートなどの表現を使用するためにカカオを約2%添加したが、「エカオ」を100%使用してもほとんど風味に違いはないという。 日本国内におけるHNノパテック社のビジネスパートナーであるエスクラフト社の松島順一社長は「エカオ」は、チョコレートの供給量の確保とコストの抑制を図り、リアルチョコレートと差別化しながら共存可能との認識を示した上で、子どもたちに安心・安全なチョコレートを提供し、持続可能な社会への貢献を目指すと述べた。日本国内での展開は、チョコレートの原料であるカカオマスの形で「エカオ」を供給し、食品会社が必要に応じてさまざまな形で加工・活用できるようにする。
日本食糧新聞社