「自分自身という、すごく身近ですごく大きな壁」――北京五輪に挑む鍵山優真、一番の敵は「メンタル」
今季のショートは「When You're Smiling」、フリーは「映画『グラディエーター』より」。いずれもローリー・ニコルの振り付けで、「表現力」という課題にも向き合ってきた。さらに自分の表現を広げるため、昨年からもう一つ、水面下で新しい取り組みに挑戦してきた。 「パプリカ」などで知られる振付師・辻本知彦のもと、初めてコンテンポラリーダンスを練習。MISIAから「明日へ」の楽曲提供を受け、辻本の振り付け、鈴木明子の氷上指導でエキシビションのプログラムを準備している。 「陸」での踊りの練習は勝手が違い、戸惑った。辻本からは「体が硬い」「身体がまだ子ども」と厳しい言葉をかけられる。自分の枠を広げたい。そんな思いで未経験の表現に取り組む。 「フィギュアスケートにない動きを取り入れているので、すごく難しいなと感じています。ダンスの経験は、小学1年生の頃にジャズダンスを習っていたんですけど、もう忘れてしまっている状態。繊細できれいな動きは課題だと思います。自分を成長させるきっかけになると思うので、やれるものは全てやっていきたいなって感じです」
とにかくスケートが大好き。自分の道を真っすぐ
夢見た五輪も挑戦の途上にある。長期的な目標を尋ねるとこう答えた。 「4回転を全種類習得すること。5回転も挑戦してみたいなという気持ちはある。入れなければ勝てない時代が来たら、やらなきゃいけない。その中でも、今の自分のペースを忘れてはいけないと思います。自分のスタイルでいうと、安定性は大事。自分の道を真っすぐ貫いていきたい」 自分は「まだまだ」とつぶやいた後、「ネガティブなことは言っちゃいけない」と思い返した。「発言していることは全て本音」で、口に出して自分を高める部分もあるという。出場した試合で、全て表彰台に上るのも目標だと語る。 「『常に謙虚に』と父から言われています。でも心の中では、絶対勝ちたいと思っている。結構自分、負けず嫌いなので、そこはどんどん出しちゃっていいのかなと思います。自分の目標ももちろん持っていますけれど、周りの人に感謝の気持ちを込めて、とにかくスケートが大好きっていう気持ちを演技で見せることができたらいいなと思っています」 鍵山優真(かぎやま・ゆうま) 2003年生まれ。神奈川県出身。2020年、ユース五輪で優勝。20-21年シーズンからシニアに転向、世界選手権で2位。21-22シーズンは、グランプリシリーズのイタリア大会、フランス大会で優勝。 (Text by Saya Tsukahara)