「自分自身という、すごく身近ですごく大きな壁」――北京五輪に挑む鍵山優真、一番の敵は「メンタル」
羽生選手の言葉で「負けん気の強さ」を自覚
20-21年シーズンからシニアに転向したが、コロナ禍で試合が中止になるなど、イレギュラーなシーズンとなった。シニア初の海外試合は世界選手権で、20年12月、代表決定の記者会見で鍵山は緊張し、うまく受け答えができなかった。 「まさか世界選手権に選ばれると思ってなかったので、『どうしよう』みたいな気持ちで。質問された時、自信がなくて、なんで自分はこんなこと言ってるんだっていうぐらい、ネガティブな発言をしていたんです。その時、羽生選手が、僕のいいところは『負けん気の強さ』で、『言いたいことを言っていいんだよ』と言ってくれた。あのアドバイスがなかったら今の自分は生まれていないと思うので、すごく感謝しています。やっぱり自分は、勝ちたいという思いがどの試合でもある」
会見でかけられた言葉に背中を押された。1日6時間の練習をこなして迎えた、21年3月の世界選手権。アメリカのネイサン・チェンに続く2位となった。結果には自分でも「びっくりした」という。 「(羽生選手は)同じスポーツをやっていて、同じ試合に出るにもかかわらず、アドバイスをしてくれる。その人間性はすばらしいなと思います。自分が同じ立場だったら、アドバイスできるか、ちょっと分からないです。羽生選手の迫力、オーラというものは、テレビ越しでも伝わりますし、目の前で見ても別次元だと感じています。いろんな経験をしてきたと思うので、すごい選手だなって。たとえ結果で超すことができても、羽生選手の存在を超えられる人はなかなかいないのではないかなと思います」 ともに北京五輪に出場する羽生と宇野は、憧れであり、競い合う相手でもある。 「スポーツをやっている以上、勝敗というものは出てくる。勝たなければならないという気持ちはあるので、進化しなくてはならない。毎シーズン、毎シーズン、どうやったら勝てるかと戦略を立てながらレベルアップできたらいいなと思っています」