NYで半世紀 ジャズの本場を生き抜いた中村照夫が写真展 新宿・伊勢丹で
ニューヨークで50年生き抜いてきたジャズベーシストでプロデューサーの中村照夫が、東京・新宿の伊勢丹で写真展「NEW YORK GROOVE」を開く。いまもフィルムカメラを愛用するフォトグラファーとしての顔も持つ中村が、これまでに撮りためた写真の中から選りすぐりの作品を展示する。準備のため来日した中村に話を聞いた。
カメラは欠かせない生活のパートナー ニューヨークの街撮り続けた
1964年から単身渡米。50年にわたりニューヨークに住み、世界的なジャズミュージシャンたちとセッションを重ねてきた名ベーシスト。プロデュースでは、ヘレン・メリルなど約40枚のレコード制作も手がけてきた。ジャズの本場を駆け抜け、75歳になる。 「子どものころ、FEN(現AFN=在日米軍向けラジオ)を聴き、SP盤(78回転のレコード)を父に買ってもらった。いろいろ聴くうちジャズと出会った。音楽的には高度すぎてわからなかったけど、最初は形から……ファッションに憧れたんだよ。今の日本の若者がヒップホップに憧れるようにね」 本場のジャズが聴きたい一心で渡米。レストランの厨房や新聞配達……さまざまなアルバイトで食いつなぎながら、ジャズクラブで演奏するようになり、69年にはロイ・ヘインズのヒップ・アンサンブルに参加。以後、一流のミュージシャンと仕事し、キャリアを重ねた。その当時から、カメラは欠かせない生活のパートナー。プロカメラマンではないものの、ニューヨークの街を撮り続けた。
「自分の写真、そんなにいいって思わないんだけど、瞬間的なインプロヴァイスしてる部分がジャズと同じでしょ。フレーズ見つけるんだよね。そういう魅力的な、衝動的なものが写真にもあるから。そして間違いなくいえることは、写真って、時間が経つと価値が出る。音楽の延長線で写真を撮っていたことが、いまとなっては意味を持つ。それと、まだまだニューヨークにあこがれを抱く人は多い。街角で犬の写真を撮っただけでも、自分の人生の中のニューヨークっていうイメージとコネクトできるんじゃないかっていう気がするんです」 今回の個展も、そんな思いを発端に実現にたどり着いた。