身近な自然がいつの間にか外来種に置き変わる 日本の外来生物対策最前線
熊本県宇土半島におけるクリハラリス防除では、2010年に、自治体・研究者・狩猟会および地域住民が連携して防除連絡協議会を結成し、防除活動を展開してきました。その結果、現在、根絶一歩手前の状態まで到達しています。本事業では防除ステージごとに防除体制を見直しており、まず、防除初期の個体群密度が高い時期はボランティア活動によって捕獲防除を進め、その後、密度が低下してきて捕獲効率が悪くなってきたところで、補助金に基づく防除専門の職員を雇用し、定期的捕殺活動へとシフトしました。 ボランティアによる防除だけに頼ってしまうと、防除効率が落ちるにつれモチベーションが低下して、活動が長続きしなくなってしまうことがよく起こります。宇土半島のクリハラリス防除における防除体制のシフトチェンジは、防除の失速を避ける上での有効な戦略であったと言えます。 外来昆虫であるアルゼンチンアリは、1993年に広島県で定着が確認されて以降、瀬戸内地方、関西、東海および関東の港湾都市を中心に定着エリアが増加し続けています。 もともと国内では不快害虫としてのアリ類防除剤が多数市販されており、こうした効果的な薬剤を使用すれば、侵入初期のアルゼンチンアリを防除することはそれほど困難なことではないと考えられますが、現実には、防除事業が進められてきたいずれのエリアにおいてもほとんど防除が成功していませんでした。 その理由としては、防除効率やコスト試算なども含めた綿密な防除計画が立てられないまま、単発的・部分的に薬剤を投下するだけで、アルゼンチンアリの増殖能力の前では「焼け石に水」で終わるケースが大部分であったからと分析されます。 国立環境研究所では、環境省、自治体および企業と連携して、計画的薬剤防除を進めることによって、関東地方において地域個体群を次々に根絶もしくは低密度化することに成功しています。 この際、単位面積辺りのコスト試算に加え、防除に必要な期間推定および根絶できたか確認するための数理モデルも開発して、これらの情報を防除マニュアルとしてパッケージ化し、各地方に普及することにも取り組んでいます。