身近な自然がいつの間にか外来種に置き変わる 日本の外来生物対策最前線
我が国の防除成功事例
日本でも外来生物防除の成功事例が全くないわけではありません。2015年12月に環境省は、外来鳥類「カナダガン」の定着個体を完全に防除したことを発表し、国内初の特定外来生物根絶事例となりました。 本種は1985年に初めて静岡県富士宮市で2羽が確認さて以降、関東地方で個体数が増えたことから、地元関係者が協力して防除が開始され、2014年までに確認されたすべての個体と卵の捕獲が完了しました。 地域(部分)防除の成功事例として、沖縄県浦添市におけるオオヒキガエル防除があります。2001年に定着が確認された後、地方自治体、地元大学、および駐留米軍も含めた地域関係機関と地域住民が連携して捕獲作業にあたり、2013年12月に捕獲された1個体を最後に現在まで、捕獲個体が確認されなくなりました。 1999年から開始された小笠原諸島の聟島、媒島、および嫁島に生息するノヤギも2002までに完全な排除に成功しています。同じく小笠原の弟島におけるウシガエル定着個体群は2004年から3年間かけて捕獲作業により根絶を達成しました。 特定外来生物ではありませんが、農業害虫ウリミバエが南西諸島に侵入した際には、20年以上の歳月をかけて不妊虫放飼法(ラジウム線をあてて不妊化した個体を放って、野生個体群の生殖を阻害する方法)とトラップを併用することで根絶に成功しました。 これらの防除事例では、個体群の分布範囲が限られていたことから、捕獲・捕殺割合あるいは繁殖阻害率が個体群増殖率を上回り、根絶もしくはそれに近い状態に到達することができたと考えられます。
地域連携の防除体制
分布域がさらに拡大してしまった外来生物においても、計画的な防除を進めることで確実に個体群密度を低下させることに成功している事例もあります。例えば沖縄島・奄美大島に分布するマングースは、マングース・バスターズという防除専門の職員を配置し、防除柵で防除エリアを囲みながら定期的に捕獲用罠の設置と回収を繰り返すことで、マングース個体群の密度減少、および在来種個体群の回復をもたらしました。