なぜアメリカのイスラム教徒はトランプを支持したのか?アブラハム合意とネタニヤフにマッチョな姿勢に期待か
■ トランプ氏の脇を固める「キリスト教シオニズム」とは 松本:トランプ氏の側近には、プロテスタントのカリスマ牧師であるジェリー・ファルウェル・ジュニアという人物がいます。第一次トランプ政権でも、定期的にホワイトハウスの中で「祈りの会」を開催した福音派グループの一人です。このグループの方々の多くは「キリスト教シオニズム」の思想を持っています。 ユダヤ人が国家を持つことを熱狂的に支持するキリスト教シオニズムが、トランプ氏の側近にはたくさんいる。こうした一派は今以上にトランプ政権にイスラエル支持の姿勢を求めます。この主張に乗ると、パレスチナやガザはもっとひどいことになり、和平はむしろ遠ざかる可能性も否定できません。 ──キリスト教シオニズムとはどういう思想なのでしょうか。 松本:次の5つの考え方を信奉しているキリスト教徒たちです。 (1)イスラエルは神(ユダヤ教とキリスト教の神)によって与えられた唯一の国である。 (2)キリスト教の母体はユダヤ教である。 (3)イエスはユダヤ人として処刑された。 (4)イスラエルを支持するキリスト教徒には神からの祝福がある。 (5)ユダヤ人を虐待するキリスト教徒には神の裁きが下る。 彼らは、自分の魂が死後にエルサレムに向かい、エルサレムに行くことで救われると考えている。しかし、エルサレムにはイスラム教徒がいる。だから、イスラエルにイスラム教徒を討伐してもらい、エルサレムをユダヤ教とキリスト教の土地にしたいのです。 聖書には「ヨハネの黙示録」という部分があり、この世の終わりがきたら、イエスが地上に現れて悪魔と闘い、地獄に堕ちる者と天国に行く者を分けると記されています。福音派はそうした話をすべてそのまま信じている「キリスト教原理主義者」です。 ──今回の大統領選では、トランプ氏を支持したイスラム教徒の方々も少なからずいたと報道されています。バイデン政権がイスラエルへの軍事支援を止めず、停戦に持ち込むようにネタニヤフ首相を説得できないことに不満を感じていた人々です。彼らはむしろトランプ氏のほうが停戦交渉を進められると考えている。キリスト教シオニズムがイスラエルの勢力拡大を求めてトランプ氏に票を入れたのと、正反対の理由でトランプ氏を支持しているようにも見えます。