なぜアメリカのイスラム教徒はトランプを支持したのか?アブラハム合意とネタニヤフにマッチョな姿勢に期待か
ドナルド・トランプ前大統領の勝利で終わった米大統領選では、アメリカ国内のイスラム教徒もハリス氏ではなく、イスラエルのネタニヤフ首相と関係の深いトランプ氏に票を投じたケースが見られた。また、これまで民主党を支持していたキリスト教のカトリック信者の票も一定数トランプ支持に流れた。 【写真】大統領選の選挙集会で、地元のイスラム教指導者たちと並ぶトランプ氏。親イスラエルのトランプ氏をイスラム教徒が支援する理由とは 中東情勢が複雑化する中、なぜトランプ氏は宗教票を集めることができたのか。国際政治史学者の松本佐保・日本大学国際関係学部教授に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト) ──今回の米大統領選で、アメリカの宗教票はどう動いたのでしょうか。 松本佐保氏(以下、松本):予想以上にキリスト教の票がトランプ支持に流れました。もともとプロテスタントの福音派は、レーガン大統領以降ずっと共和党を支持してきました。アメリカではプロテスタントが主流で、人口あたり40%くらいの数がいます。カトリックはおよそ25%弱です。 ご存じのように、福音派は政治的な影響が大きく、トランプ氏が勝利した2016年の大統領選も、敗北した2020年の大統領選も、忠実にトランプ氏に投票しました。 福音派は「バイブルベルト」と呼ばれる、テネシー州などアメリカ南東部の州に数多くいます。今回の選挙では、バイブルベルトのトランプ支持がさらに強化されました。ジョージア州は2020年の選挙ではバイデン氏が勝ったのですが、今回の選挙ではトランプ氏が奪還しました。 また、2016年からの顕著な変化として、カトリックのトランプ支持も増えています。カトリックは歴史的に民主党支持者が多かったのですが、今回の選挙では、かなりトランプ支持に移りました。 ──福音派は共和党を支持しているのでしょうか、それともトランプ氏を支持しているのでしょうか? 松本:共和党とトランプ氏の両方を支持しています。福音派は、人工妊娠中絶やLGBTに否定的で、非常に保守的です。