与野党一騎打ち「島根1区」の舞台裏は? “裏金事件”逆風で「保守王国」の牙城崩れる
自民党が3敗となった衆議院補欠選挙。その中でも、最も注目されたのは、唯一自民党が候補者を擁立した「保守王国」の島根1区での戦い。最終日にも両党の党首が駆けつける激戦の中、保守王国で吹き荒れた裏金事件の逆風、水面下の攻防を振り返る。
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■保守王国に激震…かつてない「逆風」吹き荒れる
自民党盤石と言われた「保守王国」に吹き荒れた逆風について、投開票日の夜、自民党幹部はこう振り返った。「どんな逆風にも耐えられるように、(地盤を)耕していかないといけない」一体何がおきていたのか── 裏金事件の逆風の中、自民党は組織・団体の票を固める戦略を取った。選挙戦当初、党本部は支援する組織・団体が「寝ている=動いていない」状態が多いとみて、テコ入れを行った。党幹部が現地に入り引き締めるなどした結果、中盤に差しかかるころにはその組織・団体も「動いてきた」(自民党関係者)という。 ある自民党議員は選挙戦中盤、演説会場に支援者が集まった光景をみると「目の前には支援者が出てきている。しかし、自民劣勢が伝えられるのはなぜか」と語った。それほど、裏金事件による「逆風」はかつてないほど強かったとみられる。
■「知名度」がさらなる痛手…「お灸を据える」投票行動
もう1つ、選挙戦での課題は候補者の知名度だった。自民党が擁立した錦織功政候補は、元財務官僚の新人。元国会議員の相手候補に比べると、浸透するまでに時間を要した。陣営幹部の一人は最終盤、「知名度というのは一挙に挽回できるものではない」と苦しさを語る一方、「限られた時間の中で、名前と顔が一致するまでにきてるんじゃないか」と一定の手応えは見せていた。 さらに、選挙戦を通じて聞いたのが「自民党にお灸を据えなくては」という有権者の声だった。ある自民党議員は島根について「本選挙なら、島根県民は政権交代を起こそうとまでは思っていないから歯止めが効くが、補選ではそういう歯止めがない」と指摘していた。
■首相の「異例」のこだわりも敗北…「政局になる」
選挙最終日、異例の動きが。それは、岸田首相が急遽、2度目の応援にかけつけたのだ。ある政権幹部は「首相が最終日に入って大差で負けるようなことがあれば、政局になる」と慎重な姿勢を示す中、前日になって岸田首相が自ら決断したという。 島根県の選挙管理委員会によると、補欠選挙の投票率は54.62%。投票率が下がると言われる補欠選挙だが、2021年の衆院選の投票率61.23%から6.61ポイント下げるにとどまった。 ある自民党議員は「今まで自民党に入れていた人が、亀井候補に入れている。相当深刻な事態だ」と漏らす。また陣営内からは「岩盤支持層でも、自分は投票に行っても周りに声をかけてまで行くような広がりは見られなかった」との声も聞こえた。 「保守王国」で有権者が「投票」という形で自民党にお灸を据えた選挙戦となった。