奨学金返済に新たな選択肢。年収要件緩和で利用しやすくなった「減額返還制度」と「返還期限猶予制度」とは?
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の「令和4年度 学生生活調査結果」によると、大学学部(昼間部)で何かしらの奨学金を受給している者の割合は、半数を超える55.0%となっています。 ▼「大学無償化制度」の対象者とは? 年収要件や注意点を解説 しかし、いざ返還の段階となると、失業や経済的な理由などから返還が困難となるケースもあるようです。 本記事では、令和6年4月から年収要件等が緩和され、利用しやすくなった奨学金の「減額返還制度」を中心に、併せて「返還期限猶予制度」などについても確認していきます。
利用しやすくなった減額返還制度
令和5年に策定された「こども未来戦略」では、施策の一つとして「子育て世帯の家計を応援」が掲げられ、大学等にかかる教育費負担の軽減を目的に「貸与型奨学金の減額返還制度」の緩和措置が講じられました。 減額返還制度とは、経済困難(収入等の基準)、失業、病気、災害などの理由から月々の返還が困難になった場合でも、延滞することなく計画的に返還できるようにする制度です。ただし、減額返還制度の適用期間に応じて、返還を終えるまでの返還期間は延びることになります。 減額返還制度は、令和6年4月より以下のように制度が改正され、さらに利用しやすくなりました。 (1)減額返還方法の追加新設 これまでの返還月額を2分の1または3分の1に減額して返還する方法に加え、4分の1または3分の2に減額して返還する方法も選択できるようになりました。 (2)収入基準の緩和 減額返還制度を利用可能な年収上限(目安)が、年間収入金額325万円以下から400万円以下に引き上げられました。本人が扶養している子どもの人数や給与所得以外の所得がある場合の基準もそれぞれ引き上げられ、現行では図表1のとおりとなります。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「月々の返還額を少なくする(減額返済制度)」より筆者作成
返還期限猶予制度
減額返還方式と同様に、月々の返還が困難となった場合、返還を先に延ばすことができる制度として「返還期限猶予制度」があります。制度を利用する場合には、1年ごとに審査があり、承認を受ける必要があります。利用できる期間は最長で10年ですが、病気・猶予年限特例など一部の対象者は、一定の条件に該当する期間、猶予できる場合があります。 また、減額返還制度で返還が困難となったときでも、猶予制度を利用できる場合があります。