テイラー・スウィフトの最新アルバムの「Tortured Poets」って何? 世界中で大ヒット中
ダークロマン主義
一方で、ドイツや米国では、ダークロマン主義というサブジャンルが広まった。暗く悲しい言葉で神と人との関係を追求するロマン主義だ。 ロマン主義が暗い方向に向かった(あるいは、少なくとも、暗いものがはっきり表現されるようになった)のは、超絶主義が広がり、人の善性、統一性、優越性が注目されたことへの反動だった。それを一番よく見てとれるのが、完璧さを追求することに疑問を投げかけたナサニエル・ホーソーンの『あざ』だ。 ドイツでは、中世をゴシック式にアレンジし、怪物や幽霊が登場する様式が発展した。その典型は、米国人作家エドガー・アラン・ポーが中世を舞台に野心と死生観を探求した『タマレーン』などに見ることができる。
新たな世代の「悩める詩人たち」
19世紀も、作家たちは存在に対する疑問や社会問題に取り組み続け、死、帝国主義、技術の進展といったテーマを追求していった。クリスティーナ・ロセッティ、ラドヤード・キップリングといった人々は、『海辺の墓』や『The Female of the Species(種のメス)』(未訳)といった作品を通し、感覚的な言葉を使ってビクトリア時代の不安を表現し、深い感情に訴えた。 20世紀になると、詩の表現も新たな時代を迎え、世界の政治や文化という方向に大きくシフトした。ガートルード・スタインやT・S・エリオットといった「失われた世代」の詩人たちは、型にはまらない文体で、度を超した資本主義や第一次世界大戦による荒廃を批判した。一方で、ディラン・トマスの1947年の詩『穏やかな夜に身を任せるな』は、死を前にしても、それにあらがうことを鋭く訴えた内容だった。 新たな世代の「悩める詩人たち」が現れたのは、21世紀に向かう騒々しい流れの中だ。彼らは、先人たちの伝統を受け継ぎながら、自らの進むべき道を切り開こうとした。ベトナム戦争、公民権運動、女性解放運動など、1960年代の抗議運動の影響で、詩はさらに進化し、アーティストたちの活動によって、抵抗の手段としての詩と音楽の境界はあいまいになっていった。 詩人から歌手に転身したパティ・スミスは、1970年代のパンクシーンの先駆者となった。「悩める詩人たち」という伝統は、今もまだ受け継がれていて、さまざまな芸術媒体や世代を通して、大きなインスピレーションを与え続けている。スミスの影響力も、スウィフトがそれに触れたことも、その証拠だろう。
文=Melissa Sartore/訳=鈴木和博