原爆と原発、何が違うの?
毎年8月6日と9日は「原爆の日」です。2回の原爆を経験したうえで、原発事故まで経験してしまった日本人にとって、この2日は特別な日でしょう。そもそも原爆(原子爆弾)と原発(原子力発電)では、何が同じで何が違うのでしょうか。 [図表] 原子力発電の割合はどれくらい? 原爆も原発も、ウランに核分裂反応を起こさせ、エネルギーをつくります。しかし核分裂反応をエネルギーに換える仕組みは、目的の違いのため異なります。いうまでもなく、原爆は「大量殺害」を目的とし、原発は「発電」を目的とします。
燃えるウランか、燃えないウランか
核分裂とは、原子核が2つ以上の原子核に分裂することです。またウランには、燃える(核分裂する)ウランと燃えない(核分裂しにくい)ウランがあります。 原爆でも原発でも、燃えるウランの原子核に中性子を当てます。すると、その原子核は2つに分かれます。この反応が核分裂で、このとき膨大な熱が発生します。また新たに2~3個の中性子ができます。この中性子がさらに別の原子核に当たると、また核分裂が起きてさらに中性子が発生します。 原子爆弾では、後述する原発と違ってそもそも大量殺害を目的としているため、核分裂反応は制限されることなく急速に起こり、大量のエネルギーを瞬時に発生します。 一方、原発では核分裂の際に生じる熱で水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回転させ、発電機で電力を起こします。原子炉は中性子を制御するなどして、こうした核分裂反応がゆっくり起こるようにつくられています。
原爆と原発では、使われるウランにも違いがあります。 原爆では、燃えるウランをほぼ100%にしたものを使います。瞬時に核分裂反応を起こして、大量のエネルギーを一気に発生させるためです。 原発では、燃えるウランを3~5%しか含まないものを使います。発電に必要なエネルギーを、時間をかけて取り出すのです。
「急性障害」と「晩発障害」
原爆によって放射線を浴びることは、「爆撃」によるものであることから「被爆」と表記されます。一方、原発事故によって放射線を浴びることは「被曝」と表記されます。どちらも放射線を浴びてそのリスクを負うという意味では同じなのですが、健康への影響はやや異なります。 原爆では、多くの人、とくに爆心地に近い人は一度に大量の放射線が浴びてしまうため、脱力感や吐き気、嘔吐、発熱、下痢、吐血などの「急性障害」を経験します。短期間で死亡する人も少なくありません。また、爆風や熱線、火災などによる被害も大量に起きます。その後何十年にも渡って、がんなど後になってから生じる病気、つまり「晩発障害」が問題となります。 一方、原発事故では、原発で働いている人を除ければ、一度に大量の放射線を浴びる人はあまりいません。多くの人は長期間、微量の放射線を浴び続けることになります。問題になるのは、主にがんなど晩発障害と考えられています。