アインシュタインが「特殊相対性理論」に感じていた不満とは!一般相対性理論はなぜ生まれたのか
宇宙空間の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。この記事では現代の物理学でも最大の謎の一つとされている「重力」について、アインシュタインが一般相対性理論にたどりついた思考の奇跡を追っていきます。 【写真】謎の「ナノヘルツ重力波」を検出!観測報告と「時空の歪み」の原因は? *本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
アインシュタインが特殊相対性理論に感じた不満
アインシュタインは特殊相対性理論を生み出した10年後に、一般相対性理論を発表しました。 では、「特殊」と「一般」を冠する二つの相対性理論は、何が違うのでしょうか。 まず、特殊相対性理論は、お互いに等速度運動する観測者を基準とする理論です。ここで、等速度とは、速さも向きも一定であることを意味します。 まっすぐな道路を時速100キロメートルで進む車を想像してください。この車が、等速度で運動する物体の一例です。 一方、観覧車がゆっくり回る状況を考えてください。同じ速さで回ると仮定しても、観覧車の個々のゴンドラが移動する方向は別々ですよね。大雑把にいえば、等速に円運動します。 特殊相対性理論は、等速度運動をする物体に対する理論です。 重力の本質は、質量をもつ物体全て(万物)に働くことです。質量をもつ物体は重力によって力を受けますから、その速度が変化します。つまり、重力が存在する状況では、物体は等速度運動することはできないのです。 したがって、特殊相対性理論は重力を扱うことができません。この点にアインシュタインは不満でした。
天才アインシュタインでも10年を要した思考の軌跡
速度が変化する状況でも、光速度不変の原理が成り立つように作られた理論が、「一般相対性理論」なのです。 この1個のステップを乗り越えるまでに天才アインシュタインでさえ、10年もの歳月を要しました。 特殊相対性理論において、各々の観測者を基準とする計算をする際、空間はユークリッド空間でかまいません。本稿は数学の解説ではありませんので、ここでのユークリッド空間とは、中学校や高校で習った直交座標や空間座標を思い浮かべてもらえればいいでしょう。ユークリッド空間では、平行線はどこまで行っても交わりません。