ボニージャックス・鹿島武臣さん「脳幹出血」で逝去 前兆となる症状・原因を医師が解説
脳幹出血の治療方法・予防法とは
編集部:脳幹出血はどんな治療をするのですか? 甲斐沼先生:脳幹出血の治療は、血圧の管理・脳の腫れやむくみを軽減する治療など、対症療法が基本となります。運動・体重・食事・禁煙など生活習慣を管理し、高血圧や動脈硬化に対する治療を行っていきます。 高血圧・糖尿病・高脂血症のコントロールのために内服薬が処方される場合も多いです。ほとんどの場合、手術は行いません。脳幹は脳の奥に位置するため手術は容易なものではなく、手術によって得られるメリットは大きくないと考えられているためです。 また、脳幹出血の症状は、出血により脳幹の一部が物理的に破壊されたことによって生じたものです。手術によって血腫を取り除いても、物理的に壊された脳の機能が修復するわけではないため、著しい回復が期待できるわけではありません。 呼吸困難などの症状がみられる場合は、挿管による人工呼吸管理・気管切開による呼吸管理を行う場合があります。四肢麻痺・意識障害など後遺症が残る場合は、症状に応じたリハビリを行います。 編集部:治療後に注意することがあれば教えてください。 甲斐沼先生:発症・治療直後は全身状態が変化しやすく、症状が再発する恐れもあります。そのため治療後しばらくは生命維持が優先されます。 発症から約2週間は、ベッドの上での治療・リハビリになることがほとんどです。そのため、廃用症候群が懸念されます。廃用症候群とは、寝たきり状態や不活動状態が続くことで、筋肉が衰えたり関節が硬くなったりして運動機能が衰えた状態のことです。 寝たきりによる床ずれ・深部静脈血栓症・起立性低血圧などの恐れもあるため、無理のない範囲でベッド上でできるリハビリを開始することも大切です。 また、脳幹出血は、出血部位によってさまざまな後遺症が残ります。嚥下障害が残った場合は、食べ物が詰まりやすくなるため、食事の際は十分に注意が必要です。 編集部:脳幹出血を予防する方法はありますか? 甲斐沼先生:脳幹出血を予防するには、まずは血圧をコントロールすることです。高血圧は脳幹出血の最大の原因となるため、血圧が140/90mmHg以上を超える方は血圧を下げることが最大の予防となります。 高血圧の生活習慣要因は塩分の過剰摂取です。血圧が高い方は、まずは塩分摂取を控えることが脳出血リスクの軽減につながります。脳幹出血をはじめとする脳出血は、日々の生活習慣で予防することができます。 ・塩分を控える ・野菜を中心としたバランスの良い食生活 ・飲酒を控える ・禁煙する ・適切な体重管理 ・有酸素運動を行う ・摂取カロリーを控える これらの意識は、脳幹出血の予防に有効です。激しい運動をしなくてもウォーキングなどの軽い有酸素運動で血流を良くすることで、脳出血・脳梗塞の予防となります。また、脳出血につながる疾患を早期に発見し自覚することも大切です。 高血圧・糖尿病・高脂血症などを早期発見するためにも、定期的に検診を受けましょう。 編集部:最後に、読者へメッセージをお願いします。 甲斐沼先生:脳幹出血は、脳出血のなかでも重篤な症状・後遺症が生じやすく、命の危険もある病気です。また、発症からの迅速な処置が求められる病気でもあります。 手術が難しい脳血管障害のひとつだからこそ、予防に努めることが大切です。脳幹出血のリスクを下げるための対策は、まずは適切な血圧を保つことです。 高血圧・肥満・高脂血症などリスクが高い方は、まずは減塩・減量を心がけ、発症を未然に防いでいきましょう。