「SHEIN・Temuは長続きしない」ファストリ柳井氏、透明な供給網に自信
こうした取り組みは、人権リスクの対応にも役立つ。米国の税関当局は21年、ファストリが新疆ウイグル自治区での強制労働に関与している疑いを理由にユニクロのシャツ輸入を一部差し止めた。同件についてファストリは、生産工程の情報などを提示して「強制労働の事実はない」と説明したことを発表。トレーサビリティー(生産履歴の追跡)を確保することの重要性が浮き彫りになった。 ファストリにとって、サステナビリティーに関する議論で先行する欧州は高い成長が見込める市場だ。生産の中核を頼るアジアでのサプライチェーン強化は欠かせない。新田氏は「グローバル企業として、様々な観点でサステナビリティーがビジネス展開の軸になっている」と話す。 もっとも、多くの問題が指摘されているとはいえ、シーインやテムが業績面で急伸していることも事実だ。例えばテムを運営する中国のPDDホールディングスは、23年12月期の売上高がおよそ2476億元(約5兆3200億円)に上った。前の期比9割増の急成長ぶりだ。 ファストリの24年8月期の売上高は約3兆1000億円。国内EC比率は15%ほどにとどまる。ZARA(ザラ)を展開するスペイン・インディテックス、スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)とは異なる、新たな強敵の登場で競争力を一層磨いていけるかが問われる。
中西 舞子