「SHEIN・Temuは長続きしない」ファストリ柳井氏、透明な供給網に自信
「あんなものは誰にでもできる。長続きしない」 10月10日に開かれた2024年8月期の決算説明会。「SHEIN(シーイン)やTemu(テム)といった、新しいビジネスモデルの企業が急成長しているが、ファーストリテイリングが学ぶべき点は?」と報道陣から問われたファストリの柳井正会長兼社長は「スピードは学べるが」と前置きしつつ、こう答えた。 【関連画像】ファストリと取引する中国の生地編立工場。ファストリは、アジアを中心に多くの提携先を持つ(提供=ファーストリテイリング) やり玉に挙がったシーインやテムといった中国系格安EC(電子商取引)は、多品種のトレンド重視型商品を素早く製造し、免税の仕組みを利用して低コストで輸出。越境ECとして急成長を遂げてきた。 一方、こうした格安ECはサプライチェーン(供給網)において多くの波紋を呼んできた。例えば中国・新疆ウイグル自治区での強制労働や知的財産権侵害といった疑惑だ。23年12月には、ユニクロはシーインが自社商品を模倣したとして東京地裁に提訴した。 テムを巡っては欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が10月11日、違法コンテンツの排除を義務付けるデジタルサービス法(DSA)に基づき、違法商品対策や消費者保護策について情報提供を求めた。欧州委は6月、シーインにも情報提供を求めていた。 あるシーイン幹部は「提携しているサプライヤーは強制労働や児童労働を禁止する行動規範に署名し、定期的な監査を受けている」と反論する。 この幹部は、欧米で議論が進む法規制強化について、「強制労働の撲滅やサプライチェーン可視化に向けた動きを歓迎し、協力する」と話した。その上で、「貿易がオープンでグローバル、かつ自由であり続けることを望んでいる」と強調した。 だが、柳井氏は格安ECに対し「国際的な水準や倫理から言えば法にもとる」と断じ、「あんなに簡単に商品をつくっていいのか。資源の無駄遣いではないか」と主張した。その言葉に透けるのは、自社のサプライチェーンの透明性や、サステナビリティー(持続可能性)の取り組みに対する自信だ。