「SHEIN・Temuは長続きしない」ファストリ柳井氏、透明な供給網に自信
ファストリのサステナビリティーに関する取り組みは00年代初頭に遡る。1990年代から、小売りだけでなく自社で製造も手掛ける製造小売業(SPA)のビジネスモデルが軌道に乗り、ファストリの業績は右肩上がりに伸びた。だがフリースブームの反動もあり2002年8月期には減収減益に転じ、「ユニクロ成長神話」はいったん踊り場を迎えた。 ちょうど海外展開を始めたばかりの頃だ。経営体制を見つめ直し、柳井氏は社員にこう説いたという。「事業成長だけではなく、社会からの期待に応えること。進出する国や市場に大歓迎されなければいけない」。その後、取引先工場の労働環境の管理やリサイクル活動などに着手してきた。 ●衛星データで牧場の実態把握 さらにファストリは、17年からデジタルトランスフォーメーション(DX)を本格化し、データを活用して効率的に商品を供給するビジネスモデル「情報製造小売業(ISPA)」への転換を図ってきた。サプライチェーンの下流では徹底して在庫を管理し、上流では原材料調達まで遡り、数値に基づいて管理を進めてきた。 ファストリは従来、1次取引先である縫製工場や、2次取引先であり染色などを行う素材工場までを直接管理していた。近年は、より上流に当たる3次取引先である紡績工場、4次取引先である牧場や農家まで指定し、原材料の産地や品質を管理するデータベースを構築している。 原産地の管理には、琉球大学と連携し衛星データも活用している。セーターなどに代表されるカシミヤを使ったファストリの主力製品には、カシミヤヤギの産毛が欠かせない。そこで、牧場への直接訪問のほか、衛星データを使って現地の実態を把握している。 原材料の調達は気候条件や相場変動の影響を受けやすい。一元管理することで、中間コストを省きながら自社の基準で品質や供給量を管理でき、環境負荷も把握できる。サステナビリティーを担当する、新田幸弘ファストリ・グループ執行役員は「品質やコストを担保するには、サプライチェーンの効率化は必然だ」と強調する。