はい上がった前橋育英コンビが、東洋大インカレ初優勝の原動力に 新潟内定のDF稲村隼翔とヴェルディ内定のMF新井悠太
東洋大学にとって初の優勝を決めると、2人はがっちりと抱き合った。 2024年12月28日に栃木県グリーンスタジアムであった全日本大学サッカー選手権大会決勝。新潟医療福祉大学を1-0で下したチームの中心にいたのが、前橋育英高校出身の2人だった。 【写真】優勝を決め、抱き合って喜ぶ稲村隼翔と新井悠太 J1アルビレックス新潟に内定しているDF稲村隼翔(はやと、4年)と、東京ヴェルディ内定のMF新井悠太(4年)。7年間、同じチームで切磋琢磨(せっさたくま)してきた2人は、決勝の舞台でも攻守で存在感を放った。
「東洋大に来て大きく変わった」「2人で泣きそうに」
ときに何度もロングスローを放り込む新潟医療福祉大のパワープレーを、稲村を中心とした守備陣がはね返す。背番号10をつけた新井は前半、決勝点となるPKを冷静に決めて大会の最優秀選手賞を獲得した。 「自分も(稲村)隼翔も育英のとき、なかなかうまくいかなかったというのは同じ境遇だった。2人とも、本当に東洋大に来て大きく変わった」と新井が言えば、稲村は「最後、日本一を取って終われて、2人で泣きそうになった」。歓喜の輪の中心に、4年間で大きく成長した2人がいた。 2人とも、高校時代から注目を集めるような存在ではなかった。 出場機会を得たのは、高校3年になってからと遅かった。入学した東洋大も、当時は関東2部リーグ。高校3年のときに2人でセレクションを受け、「東洋に入って、プロで活躍しよう」と誓い合った。 身長166cmと小柄ながら、サイドからドリブルを仕掛けて行く新井に注目が集まったのは、大学3年生のときだ。東京ヴェルディに特別指定選手として登録された2023年7月、いきなりデビュー戦でゴール。パリオリンピックを目指す年代別代表の候補にも挙がった。
2人とも「熱くなるタイプ」
そんな親友の活躍に、刺激を受けたのが稲村だった。 同じく2023年夏に新潟への入団が内定していたが、寮で新井のゴールを見て「寝られなくなって、悠太にすぐにLINEをした」。 「負けないから」と稲村が送れば、新井は「まだまだやり続けるよ」と送り返す。2人とも「熱くなるタイプ」。むき出しにしたライバル心が、成長につながった。 大学ラストイヤーになってからは稲村が新潟で出場機会をつかみ、ルヴァン杯の決勝で躍動した。けがで4年生になってからは思うような活躍をできていなかった新井は逆に、「彼の活躍が、僕の原動力になった」と振り返る。 2人が「大きかった」と語るのが、東洋大の井上卓也監督との出会いだ。 ジェフユナイテッド市原・千葉、大宮アルディージャなどでコーチ経験を持つ井上監督からは常に、プロになるための基準を求められた。特別指定選手として新潟の練習に参加した稲村は「行くたびに吸収して帰ってこい、と言われていた」。 プロで学んだ技術を同級生にも伝え、躍進につなげた。稲村は「自分たちが優勝するとは思われていなかっただろうし、東洋大といえば、まだ名前でも陸上部とかの方がイメージされやすい。『東洋と言ったらサッカー部だよね』という風に後輩たちにはなってもらいたい」と言う。