CHIPS法支援金の「駆け込み分配」が進む? トランプ政権移行前に
分配を急ぐバイデン政権
Hutcheson氏をはじめ他のアナリストたちは、「バイデン政権は、CHIPS法の補助金530億米ドルを、急いで分配しようとしている。CHIPS法を監督する米国商務省(DoC)は2024年9月、Polar Semiconductorに約1億2300万米ドルとなる初の直接資金を提供することを決定した」と述べている。 Reutersの報道によると、TSMCとGlobalFoundriesの他、少なくとも1社の半導体メーカーが、バイデン政権からCHIPS法補助金を間もなく受け取る予定だという。 Hutcheson氏は、「バイデン政権は終わりを迎える前に、急いで資金を放出しようとするだろう。CHIPS法は4年前に約束していた資金を、官僚的規制のために提供することができなかった」と述べる。 Intelは、CHIPS法から85億米ドルの条件付き補助金を獲得しているが、資金の受け取りが遅れていることにいら立ちを感じている。苦境に立たされている同社のCEO(最高経営責任者)、Pat Gelsinger氏は、The New York Timesのインタビューで、政府に対し、取引を完了させるよう要請している。 Triolo氏は、「米国政府がIntelなどの大手技術メーカーに対して行う支援の問題は、新政権が直面する最も複雑な問題の一つになるだろう」と述べる。 「Intelに対するある程度のレベルの支援については、幅広い超党派の支持を得られる見込みだ。またこの問題は、AI/半導体分野における中国との競争をめぐる議論の中でも取り上げられるだろう」(Triolo氏) SemiAnalysisのアナリストであるJeff Koch氏は、「トランプ政権は、既に支払われたCHIPS法の補助金を回収するようなことはしないだろう」と述べる。 「われわれの予測では、最終的にトランプ政権がCHIPS法を完全に撤廃することはないとみているが、特に米国以外のメーカーに対して恩恵を追加することについては、歩みが遅くなる可能性がある。また、CHIPS法2.0の実現の可能性もかなり低い」(Koch氏) Triolo氏は、「TSMCやSamsung Electronicsなど、米国での長期的な見通しを検討しているさまざまな海外半導体メーカーは今後、米国への投資を控え、自国内での投資や、EUや日本などのより友好的な市場への投資に目を向けるようになるだろう」と述べている。 「トランプ政権当局が、商務省が現在CHIPS法に基づいて主要な業界プレーヤーたちと交渉を進めている複雑な合意内容の詳細を確認するようになれば、何に支援を投じて何を撤回すべきかを判断できる良い位置付けを確保できるようになる見込みだ」(Triolo氏) 任期満了前のバイデン政権は2024年末までに、長期にわたって遅れてきた最初のCHIPS法に基づく資金提供を実行し、企業との間で撤回が難しいような契約を締結しようとしている。 Triolo氏によると、トランプ政権の担当者はCHIPS関連の取り組み全体をあまり支持しない可能性が高いが、米国内の製造業のオンショアリングや雇用創出など、チップ産業の再編によるメリットは広く支持しているという。