〈緑内障は運転できない?〉発症でドライバー解雇の必要なし、難しい早期発見と症状進行への理解
病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。<本日の患者> Y.M.さん、67歳、男性、タクシー運転手。 「先生、別の会社の知り合いなんですけどね、最近、緑内障だとわかったら即解雇されたそうです。気の毒でね」 「そうなんですか」 「私は、先生と眼科のS先生が一緒にうちの会社に掛け合ってくれたおかげで、もうあれから7年働けてます。本当にありがとうございました」 「いいえ、Y.M.さんが毎日ちゃんと点眼薬を続けて、生活習慣にも気をつけているからですよ」 ある日の受診の後で、タクシー運転手のY.M.さんが神妙な顔つきでこんなことを語ってくれた。 Y.M.さんは、約30年の大手運送会社での長距離トラック運転のキャリアがあり、60歳で定年退職後、地元の小さな会社でタクシー運転手になった。その頃環境の激変もあり、心身の不調を訴えて私のいる診療所を受診した。 軽症のうつ病があり、この診療所に通院してケアすることになったが、父親が緑内障だったということを聴き出したので、私が頼りにしている眼科医のS先生にスクリーニングを依頼した。その結果、ごく軽度の緑内障の変化を認めたので、それ以来点眼薬による治療と定期的な眼科受診で疾患の進行状況を評価してもらっている。
最近のニュースから
最近、NHKニュースで「“職業ドライバー”約1割が緑内障などと診断 国交省が眼科検診」という報道があった。 「国土交通省が視野の異常が起きているバスやタクシー、トラックのドライバーの割合を把握するため、2021年度から3年間に渡り、全国の運送業者に呼びかけてドライバーに視野の病気の有無を調べる眼科の検診を受けてもらい、その結果を分析」したという。24年6月に開催された第13回日本視野画像学会学術集会のシンポジウムで発表された研究結果がニュースの元になっているようだ。 3年間で2376人が眼底検査などの検診を受けた結果、全体の11.2%にあたる267人が「視野に異常が起きる原因となる緑内障やその疑い、または網膜の病気と診断された」そうだ。 実は、国土交通省自動車局では『自動車運送事業者における視野障害対策マニュアル』を22年3月29日に公開しており、この検診プロジェクトとも関連していたのではないかと想像される。