シナー、ドーピング騒動を乗り越えグランドスラム2勝目「僕をサポートしてくれる人たちのおかげ」[全米オープン]【テニス】
シナー、ドーピング騒動で痛感「メンタルがいかに重要であるか理解した」
今年最後のグランドスラムとなった「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク)。大会最終日となった現地9月8日には男子シングルス決勝が行われ、世界ランク1位のヤニック・シナー(イタリア)がテイラー・フリッツ(アメリカ/同12位)を6-3、6-4、7-5で下し、1月の全豪オープンに続いてグランドスラムを制覇。大会直前にはドーピング問題で精神的に難しかったとしながらも、「僕をサポートしてくれる人たちのおかげ」と周囲の支えに助けられたと語った。 【動画】シナー、グランドスラム2勝目の瞬間&マッチハイライト フリッツが放つショットがネットにかかり優勝が決まった瞬間、シナーは両手を掲げたがそこに笑顔はなかった。ようやく頬が緩んだのは、コーチら自身の陣営席で喜びを共有した時だった。 昨年末にはイタリアのデビスカップ優勝に貢献し、今年は1月の全豪オープンでグランドスラム初優勝。BIG4の後継者としての地位を固め、6月の全仏オープンでベスト4入りし世界ナンバーワンにも輝いた。 しかし、8月のATPマスターズ1000シンシナティで今季5度目のタイトルを手にした翌日、国際テニス・インテグリティ機構(ITIA)は、シナーが3月の2度にわたる薬物検査で陽性反応を示していたと発表。すぐさま原因を究明し上訴したことで暫定的な出場停止処分となり、継続して大会に出場することができて、結果的には当時の理学療法士に責任があるとしてシナーの潔白が認められた。 世界1位のドーピング陽性反応という衝撃的なニュース、そして過去に同様のケースで長期間に及ぶ出場停止処分が与えられながらも、今回は無罪となったことで、一部からは厳しい声も上がった。 今年に入ってシナーが成し遂げてきた偉業すべてを失墜させる恐れもあった出来事。優勝後の記者会見で騒動について、「昔も今も心の中にある」「この数ヵ月、僕がどんな経験をしてきたか周りにいた人たちは知っている」と述べ、テニスを楽しめなかった瞬間もあったという。 表彰式では、「このスポーツにおいてメンタルの部分がいかに重要であるかを理解した」と痛感。「立ち直ることができたのは、いつも身近にいる人たち、子供のころから僕のことを知っている人たち、そして家族やチーム、毎日僕をサポートしてくれる人たちのおかげ」と周りにも支えられ、大会中は常により良い選手になろうと日々努力し集中し続けた。だからこそ、チームと優勝を分かち合った瞬間に、喜びがあふれたのだろう。 シナーにとって2つ目のグランドスラムタイトル、イタリア人男子としては初めての全米オープン制覇。難しい局面を乗り越えてトロフィーを手にし、「今大会では、少しずつ自分らしさを取り戻すことができた。だから、この大会は僕を助けたよ。今は少し休んで、中国(の大会)に向けてリスタートする」と気持ちを新たに次の戦いへ進む。
Tennis Classic 編集部