トヨタのスーパーGT連覇のカギは「アレジの息子」 泣かず飛ばずのどん底を乗り越えてついに才能が開花!
4月に開幕を迎えた2024年のスーパーGTシリーズ。トヨタ・日産・ホンダの国内3メーカーの参戦するGT500クラスは、今シーズンも三つ巴の様相を呈している。 【写真】オリンピック代表候補→レースクイーン→ビキニ選手・REIKAさんの昔と今 ライバルとの僅差の争いから抜き出るため、3メーカーは今季もマシン開発に余念がない。ホンダはシビックTYPE R-GTを新たに投入してリベンジを誓い、日産勢はZをベースにした車両の空力パーツを改良して王座奪還に燃えている。 そんななか、前半3戦が終了してランキングで一歩リードしているのがトヨタ陣営だ。 昨年のチャンピオンチームau TOM'S GR Supra(ナンバー36・坪井翔/山下健太)が好調で、第1戦・岡山でポール・トゥ・ウィンを果たすと、第2戦・富士で4位、第3戦・鈴鹿でも5位入賞を果たした。 スーパーGTでは成績に応じて車体に重りが積まれる「サクセスウェイト」というルールがあり、36号車はライバルと比べるとかなり重いウェイトを背負っている。しかしそれでも、着実に追い上げて上位入賞を続けるという驚異の強さを見せている。 その36号車の強さが輝く一方、影を潜める存在となっていたのが、同じTOM'Sが手がけるDeloitte TOM'S GR Supra(ナンバー37・笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)だ。 かつては平川亮/ニック・キャシディが2017年にチャンピオンを獲得するなど、常にランキング上位で争ってきた37号車。しかし2022年にサッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋が第4戦・富士を制して以降、勝利から遠ざかっていた。 2023年からは再起を図るべく、マシンのカラーリングを一新。ドライバーもホンダから移籍してきた笹原右京と、若手のフランス人ジュリアーノ・アレジに変更した。ジュリアーノはジャン・アレジの息子として、デビュー当初から常に世間の視線を集めるドライバーだ。
【「アレジの息子」に向けられた世間の目】 ヨーロッパでレース経験を積み、父が在籍したフェラーリの育成ドライバーにも選ばれたジュリアーノ・アレジは、F1の登竜門でもあるFIA F2までステップアップした。しかし、そこでは結果を残すことができず、2021年から活動の場を日本に移した。 急遽代役で参戦したスーパーフォーミュラでは、さまざまなラッキーも重なり2戦目にして初優勝を記録。「アレジの息子」に向けられた世間の期待は、いやがおうにも高まった。 しかしその後は、上位に進出できないレースが続く。2022年からはスーパーGTにGT500クラスで参戦するも、ほとんど表彰台に届かない苦しい日々が続いた。 結果が出ないと、もちろんドライバーへの風当たりは強くなる。特にアレジは来日直後のインパクトが大きかった分、その後の苦戦が悪目立ちした。2023年のスーパーフォーミュラのシーズン途中にドライバー交代を宣告され、レギュラーの座を失ってしまうことになる。 アレジはサーキットで会えば、いつも笑顔を振る舞うナイスガイ。しかし、次第にその笑顔も消えていった印象があった。アレジが当時を振り返る。 「うまくいかない時、ドライバーのせいにするのは簡単だけど、それ以外にもさまざまな原因があったりします。僕たちはクルマをできるだけ速く乗りこなすのが仕事だから、それがうまくいかなくて実力を見せられない時間が続いた時は、正直フラストレーションが溜まりました。当時を振り返ると本当に大変な時期で、ストレスで髪の毛が抜けていないのがミラクルなくらい、本当につらかったです」 昨年からコンビを組み、ともに苦しい時期を歩んできた笹原も、アレジについてこう語る。 「ジュリアーノのフラストレーションが溜まって、めちゃくちゃ怒っている時もありましたけど、『自分たちを信じられなくなったら終わりだからね』と話していました。『とにかく耐え続けてひとつひとつ解決していこう。そうすれば絶対に何かすごいことが起こるから』と言い続けていました」