セレッソが成功させた久保建英“封じ”とは?
しかし、敵地長居で待っていたのは真夏のように照りつける太陽。キックオフされた午後3時の気温は29.8度に達し、前線から連動したプレスをかけ続け、ボールを奪うやショートカウンターを繰り出して無敗街道を突っ走ってきたFC東京から、最大のストロングポイントである運動量を奪い去る。後半33分に喫した失点を取り返せないまま、開幕から13試合目にしてついに無敗記録が途切れた。 試合後の取材エリアとなるミックスゾーンに、しかし、久保は姿を現すことなく帰りのバスに乗り込んだ。FC東京の広報によれば「試合後に息苦しさがあり、大きな声を出して話ができる状態ではないと、チームドクターが判断した」という。 セレッソが講じてきた捨て身の対策。体調に異変を訴える原因となったかもしれない猛暑。そしてシーズン初黒星と三重の苦しみにあえいだ久保だが、後半14分には一瞬の輝きも放っている。 右サイドの奥深い位置でボールをキープしながら、攻めあがってきた右サイドバック・室屋成(25)へノールックで、しかも左足のアウトサイドでループパスを通した。久保のマークについた丸橋はあっという間に置き去りにされ、なす術なくその後の展開を見守るしかなかった。 そして、室屋が送ったグラウンダーのクロスに右足のヒールを合わせるも、惜しくもゴールの枠をとらえられなかったMF東慶悟(28)は、違いを生み出せる17歳へエールを送っている。 「もちろん相手も厳しくくるし、そのなかで彼ももがきながら自分の技を見せようとしている。僕たちがしっかり支えてあげて、よりいいプレーを引き出してあげたい」 日本代表が臨むキリンチャレンジカップ2019開催に伴い、J1が中断する前の最後の一戦は6月1日。開幕から上位につける昇格組の大分トリニータと、ホームの味の素スタジアムで対峙する90分間で、同じ悔しさを繰り返すわけにはいかない。勝利を引き寄せるキーマンの一人となり、同時に相手を畏怖させるがゆえに標的とされ始めた久保にとって、真価が問われる戦いとなる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)