【もうすぐ大改造される日本の名建築】林昌二、山下和正(日建設計)〈武蔵野公会堂〉
〈武蔵野公会堂〉は、改修を受けて残る。そうなった理由は、戦後に建てられたモダニズム建築の価値が認められたからではなく、都市の再開発に伴う流動的な状況のなかで、建て替えが先送りされたという面が大きい。とはいえ、身近な公共文化施設が、想定20年という期間ではあるけれども、これからも使われ続けることとなったのは、たいへん喜ばしいことだ。これが成功例となって、他の施設にもこのやり方が広まっていけばよいと思う。 一方で、竣工時の建物の姿を拝めるのは、あとわずかとなった。改修工事は令和8(2026)年度から始まる予定。それまでにもう一度、この場所を訪れてみてはいかがだろうか。
〈武蔵野公会堂〉
東京都武蔵野市吉祥寺南町1-6-22。9時~22時。月曜(祝日の場合は繰延)、年末年始休み。施設利用に関しては公式サイトを確認。
設計者|林昌二
はやし しょうじ 1928年東京都生まれ。1953年に東京工業大学建築学科を卒業して、日建設計工務(現・日建設計)に入社。意匠設計部門のチーフとして、数多くの建築を手がけた。主な作品にパレスサイドビル(1966年)、ポーラ五反田ビル(1971年)、新宿NSビル(1982年)、NEC本社ビル(1990)などがある。日建設計副社長、同副会長、日本建築学会副会長、日本建築家協会会長などの要職も務めた。夫人は住宅設計の分野で名高い林雅子。2011年に没。
設計者|山下和正
やました かずまさ 1937年愛知県生まれ。1959年に東京工業大学建築学科を卒業して、日建設計工務(現・日建設計)に入社。1964年シュナイダー・エスレーベン建築事務所(ドイツ)、1965年大ロンドン市建築局(英国)などに勤務した後、日建設計工務に復帰。1969年に山下和正建築研究室を設立、1971年に山下和正建築研究所に改称する。主な作品にフロム・ファースト・ビル(1975年)、数寄屋橋交番(1982年)、ピラミデ(1990年)などがある。東京工業大学教授も務めた(1990-93)。
磯達雄
いそ たつお 建築ジャーナリスト。1963年埼玉県生まれ。名古屋大学工学部建築学科卒業。『日経アーキテクチュア』編集部勤務を経て、2000年に独立。現在は、編集事務所〈Office Bunga〉を共同主宰。共著書に『昭和モダン建築巡礼』シリーズ、『ポストモダン建築巡礼』(ともに日経BP)、『日本のブルータリズム建築』(トゥーヴァージンズ)など。
photo_Satoshi Nagare text_Tatsuo Iso