海外政府がサムライ債に熱視線、政治不安やスワップコスト低減
(ブルームバーグ): 海外政府や政府系機関のサムライ債発行が増えている。欧州などで政治不安が再燃する中、調達資金をドルに変換するコストが低下しており、円建て債を日本で発行する合理性が高まっている。
ブルームバーグのデータによると、2024年のサムライ債の発行総額は6日時点で1兆4700億円超と、同期間として過去5年で最大になった。6日はウルグアイが3年ぶりに起債。今年は定例発行体であるメキシコやインドネシアに加え、スロベニア、ルーマニア、アフリカ輸出入銀行が新たに登場し、政府関連の発行体数は10と過去最高に並んだ。
サムライ債発行の最大のメリットは、政治的・地政学的なリスクに伴う金利変動を避け、安定的に資金を調達する手段を多様化できることだ。欧州では連立政権が崩壊したドイツに続き、フランスで内閣総辞職が決まった。米国の次期政権が高関税政策を掲げ、世界的な貿易戦争に発展するリスクも現実味を帯びており、円債の発行需要は一段と高まっている。
SMBC日興証券で海外発行体のデット・シンジケーションを統括する安達薫氏は、発行が増えたことで新たにサムライ債に「興味を持ち始める海外発行体が増える」という好循環が続いていると指摘。日銀のマイナス金利政策解除で利回りが改善したため、国内投資家の投資意欲も高まっていると述べた。
サムライ債での資金調達コストはドル建て債やユーロ建て債よりも割高で、経済的合理性の確保が課題だ。ただ、最近は調達した円をドルに転換するコストが下がっており、発行の追い風となっている。
ブルームバーグのデータによれば、ドル・円の5年物通貨スワップの上乗せ金利(スプレッド)はマイナス幅が3日に49.1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、22年1月以来の低水準まで縮小した。マイナス幅が小さいほど、円を使ってドル資金を調達する投資家が払う金利が低下することを意味する。
みずほ証券の大森翔央輝チーフデスクストラテジストは、日銀の追加利上げで調達コストが上昇する前に、来年の第1四半期にも多くの発行体がサムライ債を発行すると予想する。