米国人の1割が親子断絶 なぜ疎遠な家族は増えているのか
世の中には愛情深く温かい養育環境で育った人も多いだろうが、あなたの身近にも一人くらいは亀裂の入った家庭で育った人がいることだろう。 家庭内の反目がいつ限界を超えてしまうのかを見定めるのは容易ではない。しかしそうなった場合、長く心理的負担に耐えてきた子どもたちは成人後、自分自身の心の安寧のために家族から距離を取らざるを得なくなることがある。 コーネル大学ワイル医科大学院のカール・ピルマー教授(発達学・加齢学)は、2020年の著書『Fault Lines: Fractured Families and How to Mend Them(家庭内断絶:機能不全家族とその修復方法)』の中で全米規模の調査を行い、米国人6800万人のうち27%が家族の誰かと疎遠な関係にあり、10%は親子間が疎遠である事実を明らかにした。 家族との縁を切る子どもたちが増えている理由として、明白なものは以下の3つだ。 ■1. 毒親と虐待 疎遠になる理由として最も一般的なのは、親子間に愛情や思いやりが欠けているという認識だ。成長後に親と疎遠になった子どもたちの多くは、親との関係を有害とみなしており、それはしばしば幼少期から思春期にかけてのネグレクトや虐待に由来する。こうした人々にとって親と関係を断つことは、困難だが必要なステップなのだ。 オンライン掲示板Reddit(レディット)で、あるユーザーはこう告白している。「父と継母、2人の異母妹と会わなくなって4年になる。理由は、虐待と幼少期のネグレクトだ。何年もセラピーを受けてようやく、自分の子ども時代がどれだけおぞましいものだったかがわかった。後悔はしていない」 一方で、絶縁された親がその理由を子どもに問い、説明されても納得しないケースは多い。多くの親は、わが子が縁を切る選択をした事実を受け入れられない。時には、子どもが親を愛するのは当然と考え、絶縁を決断するのはあまりに非常識だと非難する場合もある。 こうした親たちが、親子関係の断絶という現実を完全に理解し受け入れるには時間が必要だ。一線を引かれた後もしばらくの間、子どもに介入したり現実から目をそらして生活したりすることがある。