米国人の1割が親子断絶 なぜ疎遠な家族は増えているのか
価値観の不一致から疎遠に
■3. 価値観の不一致や思想的な対立 思想的な対立が、疎遠の原因になることもある。具体的には、政治信条、結婚観、宗教観、あるいはLGBTQIA+など性的マイノリティーの子どもの受容などが挙げられる。 親子の価値観や世界観が根本的に相容れない場合、対立は先鋭化しがちだ。一方が他方の信念を軽んじて取り合わず、軽蔑する場合には、関係の不和はとりわけ顕著になる。相互尊重の欠如は関係を断絶させ、疎外感を生み、双方が傷つく結果に至る。 「私は両親からつらく当たられたわけでも、虐待を受けたわけでもない。子ども時代はおおむね幸せだった。ところが、2016年を境に、両親はどんどん右傾化して陰謀論にのめり込み、ついに『自由』を求めて別の州に移住した」と、あるレディットユーザーは明かした。「私たちのあいだにはもはや、共通の価値観や信念が何もない。両親が『新型コロナウイルス感染症は中国の陰謀だ』と話すのを聞いて、自分の子どもを預けることはできないと悟った」 結婚やライフスタイルの選択といった、個人の決断をめぐる意見の不一致もまた、親子の断絶につながる。たとえば、性的指向や、息子が妻の姓を名乗ることについて、親が子どもの自主性を受け入れ尊重することを拒むような場合だ。受け入れてもらえなかったという経験によって感情面の亀裂は深まり、親子関係はじわじわと冷え込んでいく。 関係の断絶が一時的なもので終わる場合も多い。多くの家族が、しばしばカウンセリングの助けを借りつつ、疎遠な時期を乗り越え、和解に至っている。和解においては、親が断絶の責任が自分にあると認める姿勢が重要だ。 だが、和解が常に可能とは限らない。一線を引き続けることがメンタルヘルスに不可欠なこともある。すべての関係が修復可能なわけではないし、すべての関係を修復すべきだともいえない。 愛情や信頼感が欠けた家庭で育った子どもたちは、自分が他の人と関係性を築く際にも、こうした価値観を重んじることに苦労しがちだ。逆に言うと、愛と敬意が常に存在している家庭においては、関係性が疎遠になることはまれだ。
Mark Travers